日記と短歌
by papiko
偽りのエンドロールが止まらない決着なんてつくはずがない
 人が生まれたてのときに持っている感情は、快と不快だけなのだと、学生のころ家庭科の授業で習いました。そこから人として育てられていく過程で、どんどん感情が枝分かれして複雑化していくのだそうです。
 昨日会社で、ある強い苛立ちによって自意識が急速に存在感を増したとき、仕事中の自分の感情が、まるで生まれて間もない人のように、単純化されていることに気付きました。嫌悪感、達成感、焦燥感。だいたいこのたった三つの感情を行ったり来たりしているうちに、私の勤務時間は過ぎていきます。仕事のことではなるべく無駄に悩んだり悲しくなったりしたくないから、感情の動きに注意を向けないように向けないようにしているうちに、仕事中の感情変化機能はだんだんと退化して、枝分かれしていたはずの枝が朽ちて折れて、必要最低限、というより、どうしても避け難い感情だけが、残ってしまったようです。
 この退化がさらに進んだ場合、最終的にただひとつ残るのは、嫌悪感なのではないかと、強い苛立ちの中で思いました。私が私を手放さない限り、外部のあれこれに対して嫌悪感を抱かないことは、できないだろうからです。嫌悪感が自分を保っている証明になるなんて、悲しいけれど、会社ではそれが一番、見つけやすい自我なので、私はそれを一番最後まで、手放さないでしょう。

***

 祝日の今日は、少しだけはりきって大掃除。窓を拭いて結露防止の液を塗って、窓のサンにたまった砂を、割り箸にくくりつけたぼろ雑巾でごしごし擦って綺麗にしました。実家にいたころ、年末が近づいてくると母が大掃除の役割分担表をつくり、どういうわけか、私は毎年窓ふき担当でした。だから、大掃除といえばまずは窓ふきなのです。ちなみに上の妹はお風呂掃除、下の妹は散らかし放題の自分の部屋片付け、母が台所の換気扇掃除で、ツリーやら使わなくなったものを屋根裏に片付けるのが父。大体いつもそんな分担でした。
 不思議なもので、実家では毎年、寒くて面倒くさいわぁとぶーぶー文句たれながら渋々やっていたし、親元を離れてからも、一人暮らしのうちは大掃除なんて呼べることほとんどしていなかったのに、結婚して自分と夫との生活を持つと、母のしていたのと同じことを、しなくては気が済まないようなのです。換気扇もやらなくちゃ、あと、納戸にあれを片づけてしまわなくちゃと、あれは重たいから夫に頼んで・・・と、わたわた計画を立てている自分に気づいて、なんだかおかしくなりました。そのうち、分担表を作り始めそう。

***

 きれいな音楽を聴いて、それに溶け込むくらいの、きれいな言葉を、発見したいと思いました。言葉がもっと欲しいと求めるために、見つけた言葉を愛するために、きれいな音楽は不可欠です。そんなわけで、今日聴いた、きれいな歌を三連発、ここに。
 
 ハウス北海道シチューのCMで流れる、ウルフルズの曲。「あったかい、あったかい、なにかいいことあったかい? あったかい、あったかい、誰かいい人に出会ったかい?」という歌詞に、ずきゅんと心を射抜かれました。なんてウルフルズらしい、生活に寄り添った歌詞だろう!CM用につくった曲で、今のところ発売は未定なのだとか。ここ以外の歌詞も知りたいから、発売してほしいなぁ。

 『手紙~拝啓、十五の君へ~』(アンジェラアキ)。ちょっと、なにこのいい歌・・・! アンジェラアキ、歌い方も言葉も大げさすぎるイメージがあって今まであまり聴こうとしていなかったのだけれど、夫がいい歌だというので聴いてみて、やられました。私も過去の自分に、手紙を書きたくなりました。十五のころよりも、私の学生生活で最も毎日がしんどかった十三のころの私に、書いてあげたいなぁ。大丈夫だよ気にするなよと何回も。
 しかもこの曲、NHK全国合唱コンクール中学生の部の、課題曲だったようなのです。私も中学校のころ合唱部で、NHKコンクールの課題曲も歌っていました。まさに十五歳当時の思い出です。これが課題曲だなんて、羨ましい! 合唱バージョンは、こちら。私は合唱バージョンのほうが、思い出をじかに刺激されて、胸が熱くなります。NHKの全国大会は東京であるので、みんなで東京に行きたくて、一生懸命練習しました。しかし、今合唱部のころの出来事を思い出そうとしても、窓の外で走りまわっていたサッカー部の姿ばかり浮かんでくるのは、私が不真面目だった証拠でしょうか。

 Queen's decade(the unperson)。一番上の曲です。夜明け前の旅人のような、生暖かい風の吹き抜けていく草原のような、特別な物語のオープニングを思わせる旋律。これは、私にしては珍しく英語の曲なのですが、この音楽をつくっているのは日本人の方で、外国に住んで音楽をつくる傍ら短歌も詠んでおられて、だから私は短歌を通じて知りました。
 the unpersonの他の音楽もこちらで聴くことができます。ガラス張りの部屋のなかで、程よく濁ったぬるま湯に身を浸して、湯気でだんだんと曇ってゆくガラスの向こうで動きつづける世界を眺めているような、そんなイメージの音楽。心地よくて不安で、揺らめきのなかでうとうとしているうちに、いつの間にか頭まで水につかっていたことに気づいて、呼吸の在り処を忘れかけ、慌ててぷはっと顔をあげ息を吸い込むと、水滴に洗われたガラス張りの向こうには、夜更けの町の慎ましやかな明かりがいくつか。沈んでも、浮かんでも、うつむいても、みあげても、どうしても、ありつづける現実。
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by papiko-gokko | 2008-12-23 21:16 | Diary | Comments(0)
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