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日記と短歌
by papiko
取り返しつかない夜の真ん中でふたり冴え冴え星空談話
 今しばらく目をそらしていたい事柄があり、あぁ、そらしたいなぁそらしたいなぁと思っていたら、ひょんなことから頭の中で、星空に関する記憶の連鎖がはじまった。そんなわけで、今日の日記は星空談話。

 印象的な星空には、その傍らに男の人がいる。
 一緒に星空を見上げた最初の男性は父。普段は現実主義者を装いつつもひそかに重度のロマンチストである父は、夜空の下を歩くたび、そこが山であれレストランの駐車場であれ、「見てみ、冬の大三角形が・・・」と、立ち止まって星の話を始めるのだった。父が私たち三姉妹に何かを教える場合、いつもレベルを長女の私にあわせて話してくれたのだが、私はそのころから物覚えのよくない子供だったようで、今思い出せることといえば、「大三角形」といいながら、人差し指で星と星を繋いで夜空にぐわぐわ大きく三角を描く父の身振りとか、父が話し始めるたび初めて聞いたみたいに感心する母の「へえ、どれだ、いっぱいあって」などという相槌とか、長く見上げすぎて重たくなってくる瞼とか、そんなことばかりだ。たぶん幼かった妹たちのほうが、父からの知識をしっかり吸収していると思う。

 高校生のとき、はじめて父ではない男の人と、印象的な星空を見上げた。部活で夜間練習を追え、好きだった人とたまたま同時に外へ出て、なんとなく同時に星空を見上げ、歩き出そうとしたその拍子、彼が唐突にビシッと天空を指差して、「あれがオリオン座であれがカシオペア!・・・とか、今説明できたらカッコいいよね、オレ全然わからんわ、イヒヒー」と、星に目を向けたまま軽やかに言ったのだ。その、ぴんっとのばした腕の真っ直ぐさと、イヒヒーの屈折に、私はしびれてとろんとして、わからんほうがいいとかなんとか、よくわからない返答をした。そして、説明のつかない星空を、私の宝物にした。

 大学生になってからは、飲み会などで同年代の人たちと星空の下を歩く機会が増えた。特に地元で飲み会があった帰りは、田んぼと民家しかないまっくらの道を歩くから、まさに星降るような夜空を見上げながら帰るのだ。いつごろの飲み会だったかは忘れてしまったが、飲み会のあと近所に住む数名で歩いて帰り、最終的に一番ご近所さんの男の子とふたりになったとき、やはりどちらからともなく空を見上げて、「それにしても、出雲は星がすごいね」と、言い合った。そうして二人でひとしきり感動を口にしたあと、視線を星に投じたままご近所さんが、「去年の夏の流星群のとき、僕は山まで見に行って・・・」と、流星群を見た日について聞かせてくれたのだった。ゆるく相槌を打ち流星群の様子を思い浮かべながら、あぁ男の人っていうのはこんなふうにして夜を歩くと、自分の星に対する知識の程や見解や記憶などを、ゆったり語ってくれるものなのだなぁ、そんなだから男の人は可愛いんだなぁ、と、ほろ酔いの頭で思い、くすくすした。

 ともに星空の下を歩き、唯一、星を突っぱねた男が、今ともに過ごす夫である。まだ恋人のころ、夜更けにふたりでコンビニへ出かけて、そのときもなんとなく空を見上げながら「東京でも夜中はそれなりに星が見えてきれいだね」と話しかけたら、「えー星きれいじゃないよ、普通に恐いよ。見える数が多ければ多いほど恐いよ。全然、きれいとか思わないよ。」と、彼はほとんど見上げもせずに言い放ったのだった。生粋の都会っ子である彼は、小学生のころ旅行先で生まれて初めて満天の星空を見上げたとき、感動よりもむしろ恐怖を覚えたのだという。私なんかは、上京して間もない頃、星のない灰色の夜空をみるたびぞっとしたものだけれど、育つ環境によって、恐怖の対象は変わるのだなぁ。この手のひねくれに極上の心地よさを感じる私は、その違いを好ましく思いながら、こわい星空を眺め歩いた。
 いつか子供ができて、星空を見上げるときには、これまで聞いた星空話のやり方を、ミックスして話そう。夫の子だから、斜に構えつつも私のミックス話をふふふんと吸収してくれるんじゃないかな。
by papiko-gokko | 2008-11-17 16:41 | Diary | Comments(0)
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