日記と短歌
by papiko
秋の日曜日
 目覚ましに噛み千切られるようにではなく、体のリズムの揺らめくままに目を覚まし、きちんと起きなくてもいい休日の喜びをぐだぐだとしばらく布団のなかで噛み締めながら、カーテンの向こうの明るさ具合で、今日は布団を干せそうだなぁ干したいなぁと思う。そんなふうに穏やかな朝を迎えることに成功した日曜日は、一日を通して穏やかに過ごせることが多い。
 今日はそんな日曜の朝の迎え方に無事成功し、雲ひとつない秋晴れのベランダに、威勢よく布団を干した。こんな晴れた日に朝からしっかり干しておけば、夕方にはふかふかになるだろう。そう思うと、たまらなく夜が楽しみになった。夜になったら、月曜日がすぐそこまで近づいていて、ふかふかの布団なんてかえって憂鬱を助長するだけかもしれないにも関わらず、とにかく、楽しみになった。嫌な可能性について考えるのを忘れるほど楽しみになれるのは、幸せなことだ。
 のろのろと顔を洗い、平日より3時間ほども遅い朝ごはんを食べていたら、引越し業者さんが、ダンボールを引き取りにやってきた。昨日ようやくすべてのダンボールを空っぽにして潰すことができたので、さっそく引き取りを頼んだのだ。引越しに使用した大量のダンボールを引き取ってもらうと、部屋が俄然すっきりとして、引越しをしたのが一気に遠い日のことのように感じた。ついに引越しのすべてが終わったのだと思うと、嬉しくなって、スピッツをかけながら掃除機をした。休日の部屋にスピッツが流れていると、それだけで心地よい休日になりそうな気分になる。スピッツマジック。

 遅くに起きた午前中はぼんやりしているうちに過ぎて、恋人と共に昼食夕食の調達をしに出かける。少し歩くとなんだかいつにも増して急に人通りが多くなり、なんだろうなんだろうと不思議がりながら歩いていたら、小川沿いの区民グラウンドで、区を挙げての大々的なお祭りが催されていた。広々としたグラウンドに、白テントがぎっしり並び、ワイワイガヤガヤ人で溢れかえっている。グラウンドの中心には舞台も用意されていて、ハッピを着た子供たちが、元気いっぱい掛け声をあげながらソーラン節を踊っていた。人の群れの間から子供たちに配られているらしき風船が色とりどりにひょんひょんのぞき、大人たちは焼きそば片手に挨拶を交し合い、いかにも愉快で楽しげな雰囲気が、グラウンドに充満していた。
 気付けば私も恋人も、文字通り吸い寄せられるように、ビニール風船でつくられたお祭りの入場門をくぐっていた。大音量すぎてスピーカーの音が割れているソーラン節と、テントから漂ってくる焼きそばソースの匂いが、気分を高揚させる。テントは、個人商店や趣味の団体や企業など様々な人たちが出していて、イカ焼きや綿菓子といったオーソドックスなお祭り系食べ物から本格的なケーキに漬物、手作りのカバンやプチテニス教室体験テントに至るまで、その内容も実に種種雑多だった。所々に休憩所というテントも用意されていて、そこでは大人たちがビールを飲んだり、子供を膝に乗せておしゃべりしたりして、和気藹々とくつろいでいた。ベビーカーを押す若い夫婦、風船を持ってはしゃぎまわる子供、ゆったりと歩き雰囲気を満喫している風なご老人、ハッピ姿のはりきりおじさん・・・誰もが思い思いにお祭りを楽しんでいて、ぐずる子供の不満顔さえも楽しげで、なんて健やかで朗らかな風景だろうかと、感動してしまった。そしてそのお祭りに、自分たちがふらりと立ち寄れることに、喜びが沸いた。自分もこの街の風物詩に、参加することができるんだ。よそ者じゃないんだ。ゴミの日やルールを把握して、同じ道の交通規制に戸惑う私も、この街の住民なんだ。来年もこのお祭りに、ふらりと吸い寄せられていくような自分たちでいられればいい。
 どこのテントもにぎわっていて行列だったので、何か買ったりはせず雰囲気だけ楽しんでお祭りをあとにし、マクドナルドで昼食を済ませて(隣で小さな女の子とお母さんが、あさっての遠足のお弁当なに入れようかという会話をしていて、ほのぼのした)、夕食の買い物をして、それからでっかいアイスを買って帰った。冷凍庫にでっかいアイスがあるということの安心感といったらない。だってアイスだから腐らないのだ。しかも裏切ることなくおいしいのだ。

 家に帰ってからはずっと、夕食のころまで読書をしていた。昨日と今日で一気に読み終えてしまった本は、可笑しく穏やかな小説で、全体を通して素晴らしかった。文体も内容も素晴らしくて、一行一行酔いしれた。最後の最後まで心ゆくまで酔いしれて、まだ本の世界から抜け切れずにぼーっとする頭で今朝干した布団を取り込んだら、ふかふかになっていた。十月の日差しは強くても風が冷たいので、布団の表面はひんやりとしていて、本を読み終えたばかりの火照った額にそれがちょうど心地よく、しばらくの間ごろごろ抱きついていた。
 秋はいい。夏よりずっと食べ物を美味しく感じるし、夏には胸焼けがして読めなかった種類の本も、さくさく読めてしまう。だから秋は、命が元気になる。今年も夏は辛かった。肉体的にも精神的にも、なんだかしらないが非常にしんどかった。何をするにもくたびれて、何を考えるのも苦痛で、なにからなにまでストレスで、終わらせたいことばかりあるように思えた。どうして私はこんなにも夏が苦手になったのだろう。ここ数年の夏を思い返すにつけ、東京の夏は尋常じゃなく生き辛い。あぁ、秋はいい。空気の乾燥以外、なにも不快じゃない。
 恋人がテレビをつけ、「サザエでございまぁす」というおなじみの自己紹介とテーマソングと共に、夕食の準備及び夕食が始まる。前の家に住んでいたときから、なぜだか毎週、私たちはサザエさんを欠かさず観ている。ストーリー展開について邪悪な感想を述べ合ったり、マスオさんの肩身の狭さに同情したりしながら観るのだ。そうして、エンディングに近づくにつれ日曜日が終わろうとしていることを実感し、残りの時間を大事につかわなくてはと、切なくなる。
 そんなふうにして、終わろうとしている日曜日。明日は月曜日。そしてもうすぐ給料日。私の意識の外側で、みるみるうちに成り立っていく日常。
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by papiko-gokko | 2007-10-21 22:37 | Diary | Comments(0)
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