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日記と短歌
by papiko
父が来て、父帰る
 先日の日記の通り、昨日は恋人と共に父と会った。そうしてなんだかんだで結果的に、父は私と恋人のアパートにさらりと一泊泊して帰ったのだった。理由はいろいろあったようななかったような、つまりは、お酒の力ってすごいよねということである。
 はじめ待ち合わせ場所で落ち会ったとき、私が、父と恋人のことをそれぞれに紹介することをうっかり忘れていたので、しばらくは一同ぎくしゃくしていたが、父に促されてようやくお互いを紹介し、それからはなめらかな関係になった。父は思いのほか恋人に好意的に接したし、恋人は思いのほか気さくに接したので、私も思いのほかリラックスして過ごした。
 待ち合わせ時間が予定より早まり、夜ご飯までかなり時間があったため、父のリクエストで皇居と靖国神社を観光した。念のため言っておくと、別に右寄りではない。ただ父は歴史が好きなので、そういう選択肢になったのである。本当は両国の江戸博物館へも行きたかったのだが、さすがにそこまで時間も体力もなかった。城めぐりが好きな父にとって、皇居は皇居というよりかつて江戸城であった場所いうことが魅力なのであるらしく、皇居をぐるりと取り囲む堀を眺めては、「これだけ掘ってあるとひとたまりもない」と、しきりに感心していた。私としては、桜田門が興味深かった。歴史の教科書で習ったけど、どんな門だかなんて知らなかったから。父がカメラを持ってきていて、恋人とふたりの写真を撮ってくれたりして、不思議な気分になった。
 靖国神社は、恐かった。出雲大社とは、全然違う。風通しが悪くて、全体的に鉄色で、魂がのびのびしない、歩けば歩くほど重たくなる。鳥居をくぐりながら、「親父(祖父)の兄弟もふたり戦争で死んどるけん、魂がここに祀られとることになるんかなぁ」と父がつぶやき、そのとたん、なんて悲しい場所に来てしまったのだろうかと、足がすくんだ。ここに祀られているのは、不思議な力を持つ神様じゃない、無念のうちに死んでいった、私より若いような命なのだ。一枚写真を撮ることになり、いつものくせでピースサインをしかけ、ぎょっとして手をひっこめた。ものすごく相応しくないサインに思えた。広島の平和記念館へいったときは、ピースサインをできたのに、どうしてだろう。同じように戦争を悼む場所であるはずなのに、なにかが決定的に違った。どちらがいいとか悪いではなく。被害者でありながら加害者でもある戦没者の、穏やかじゃない魂が、吹き抜けられない風を生んでいた。お賽銭をなげたときも、なんだか未来へ向けて平和を願っていい場所ではないような気がして、ただ、どうぞ安らかにと、ごめんなさいと、祈った。美しい戦闘機が飾ってある場所もあり、眺めていたら、そこに自分より10近くも若い青年の姿が見えて、悲しくて悲しくて悲しくて、泣いた。わぁ泣くなんて最低だ軽率だと思いながら、どうにも悲しくて泣いた。その戦闘機は、戦争の悲惨さを訴えるようにではなく、何かを讃えるように、かっこよく飾ってあって、中国や韓国の人が怒る気持ちも、すごくわかる気がした。私が日本にひどいことをされた国の人だったら、あんなふうに自分たちの国を痛めつけた飛行機が飾ってあるような場所、すごく嫌いで、もっと恐い汚い飛行機を置け!と思う。けれど、日本人である私は、せめてゼロ戦がキズだらけではなくて、この戦闘機に乗っていた人は死ななかったのかもしれなくて、よかったと、思ってしまう。こんな難しい感情に宗教とか政治とか永久戦犯とかいろいろ絡んでくるのだから、国をあげてもめるのも、仕方がないよなぁ。一度来ておいてよかったと思ったけれど、もう二度と行きたくないとも思った。楽しいことばいっぱいの東京に、こんな悲しい気持ちになってしまう場所が、あったなんて。
 靖国神社のせいでしばらく気持ちがへこんでいたけれど、夕ご飯に向かって移動するうちに元に戻った。典型的な現代人、ちょろっと泣いて、分かった気になって、希薄、薄情なのである。よるご飯は、築地!あの、テレビなんかでよく魚のやりとりがされている、築地だ。恋人が前々から行きたがっていて、そこでおすしを食べることになったのだった。築地のおすしは、おいしかった。トロがとろんとろんだった。私は築地まで来てうっかり納豆巻きを頼み、父と恋人に呆れられたけれど。だって納豆が食べたい気がしたんだもの。お酒がはいり、父も恋人もよくしゃべった。いつだったか、「お前が恋人をつれてきたら厳しい親父になる」と言っていた父のくせに、恋人がトイレで席をたったすきに、「俺はなにか地雷を踏むようなこと言ってないか?彼はなにかタブーな発言とかあるのか?」などと、聞いてくるのだった。恋人が田舎を馬鹿にするので、今度キャンプに連れて行こうということになったあたりから、私は酔いがまわってきて、ただただ幸せな気持ちだった。恋人と父が仲良く話をしているのを眺めるというのは、こんなに満たされる、幸せな気持ちだったのか。なんというか、天下取った気分。
 恋人と父が割としつこく飲むので、私もほろほろ酔って、ほろほろしているうちに、恋人が「お父さんうちに来てもらえば?」といい、ほろほろしているうちに、父はうちに泊まることになった。なにしろ父の出張先は正確には東京ではなくて、帰るのにはわりと時間がかかり、そのうえ翌日も仕事がないからまた東京にて友人と会うことになっているとかで、今日帰ってまた明日東京にくるのは交通費が無駄だけどホテル取ってないし云々と始終ぶつくさぶつくさいっていたので、恋人も、このおっさんめんどくさいから泊めとこう、と思ったのだと思う。とにかく私がほろほろ酔っているうちに、恋人と父があれこれで、家について、家でもちょっと飲みなおして、眠るに至った。いつも私と恋人が生活している部屋で私と父が眠り、恋人に今はほとんど物置と化しているほうの部屋で眠ってもらい、父は一体どんな気分で私と恋人の暮らしている部屋を眺めるのだろうとハラハラしたが、実際部屋の様子には感心があまりなかったらしく、ただ恋人の本棚に興味を示していた。部屋に遊びに来た人はみんな、恋人の本棚に興味を示す(私のには示さない)。恋人は卒論で漢詩をやったので、数年中国で働いていた父としては、それが嬉しかったらしい。
 今朝、なんとなくお酒の残ったままの頭で無理やり起きて、父に鍵を託して会社へでかけた。私にあわせて家をでるのはしんどそうだったので、ポストにいれておいてもらうことにしたのだ。会社から帰ってきたら、「ぱぴこが元気そう&楽しそうで安心しました。実家に帰ったらまた世話してあげます」というメモ書きと共に鍵が入れてあり、父は帰っていったのだった。母に、父が泊まっていったことを電話で話したら、お父さんらしいと呆れていた。さては、謀られたか。でもあのまま私と恋人だけが同じ家路につけば父は寂しかっただろうから、まぁいいか。恋人に感謝。
by papiko-gokko | 2007-04-16 22:35 | Diary | Comments(5)
Commented by ちぺ at 2007-04-17 08:50 x
爆笑!!!
いやこう微笑ましい優しい感じにあふれた笑いがこみあげてきます。
うまくいって良かったね。
うちなんか相変わらず旦那が父を恐れていてめんどくさいよ。
うち(私の実家)に来たら来たでのびのびはしてるんだけどね。
ぱぴこは父親思いのよい子です。
よしよし。ほめてつかわすぞ☆
Commented by アチャ at 2007-04-17 19:41 x
おっさん泊まったんかwww
2日連続で電話に気付かなかったからやべーと思ってたけど楽しく過ごせたみたいでよかった☆あたしが絶対行かんようなところに行ったのねぇΣ(・Д・ノ)ノ
Commented by papiko-gokko at 2007-04-17 23:18
>ちぺさん
ありがとう!なんだか長い一日だった!
まったく、うまくいってよかったよ。何度も不思議な感覚になりました。
帰りの電車でちぺの住む街を通って、酔った頭で父に説明しました。
今度私も恋人をまた島根に連れて行きたいんだけど、
都会っこの彼は、島根にいくと、くしゃみと鼻水がとまらなくなる。。。
Commented by papiko-gokko at 2007-04-17 23:24
>アチャさん
おっさん、どさくさにまぎれて泊まっていった笑
2日連続で電話にでらんかったとかウケル!
そういえばそのうちの一回は、おすし屋さんで、酔ってかけとった笑
今度アチャが東京にきたときは、もっと楽しいとこ行きたい。
原宿は疲れるけんヤダけどネ
Commented by ちぺ at 2007-04-19 22:13 x
島根に帰ると肌がよくなるぱぴことは真逆だねえ
私もいきたい!島根いきたい!
そしたら子供も連れてってあげたいなあ。
喜びそうだね。
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