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日記と短歌


by papiko

待ちわびた春のまんなか咲き方が分からないまま風にふくらむ


お揃いで羽織るジャケット少しだけ背伸びをさせてくれる君が好き


科学者になれない君と神様のみえない僕が集める電池


リビングにふたりで買った家具が増えまた後戻りする余地が減る


休もうか駆けあがろうか坂道の途中でふいに気づく靴ずれ


クリニックパチンコ葬儀屋不動産かわらぬ駅の広告と僕


帰れない人の数だけ灯されて光り輝く東京の夜


思い出は数え切れないほどあって言いたいことはひとつしかない


雨男だからと苦笑する君の降らす雨なら桃色の傘


春風に抱かれお別れ陽だまりに目を細めたら振り向かずゆけ


背を向けて空を睨めばこの星の一番遠い場所で目が合う


シワのないワイシャツ隙のない君の休日なんて知りたくはない


始めたいこともないのに終わらせてしまいたいことだらけの日々だ


クセのある香水つけて着々と君の意識に縄張りを張る


目を閉じてあなたの歌を追いかける同じときには歌えなかった


こっそりと振り返ったらまだ同じ顔して立っているお母さん


友情も恋の持続も諦めてやっと優しくほほ笑みあえた


ケンカして仲直りして始まりを忘れるぐらい一緒にいたね


喜びに触れる間際の戸惑いに君とはにかむ雨音の中


ひとつだけ君の命と約束を交わそう僕はずっと味方だ


ポケットにキャラメルの箱なつかしい昨日と見たい明日があるの


夢で会う君は私を少し好き私は夢と気づくほど好き


声がする海風のなか今じゃない場所から届くきみの声だね


朝焼けに地球一周パイプ椅子並べてひとつの命を待とう


生命の奥へ奥へと誘い込むように轟くおまえの鼓動


建て付けの悪い事務所の窓を開け風を待つとき故郷が欲しい


雨の日に灯した愛がありまして君の生まれるまえのお話


会うまでにあなたに贈りたいものが増えて日に日に大事な明日


晴れた日に君が元気でいればいい雨に差したい傘をあげたい


ブランコが少しも退屈ではなくていつも砂粒まじりのシューズ


カーテンが風に膨らむ教室で思い過ごしの鼓動とじゃれる


ひとりでも歩ける君のまっすぐな背中に微かな追い風よ吹け


返信が欲しいのじゃなく君の手を遠隔操作したくて送る


闇を裂き電車が通過するたびに途切れる会話ちかづく心


ゆくゆくはムーミンママになりたいの野苺を煮てマフラーを編む


雨にぬれ波打つ地図が平坦な道じゃなかったことを教える


この星が希望に満ちていなくても君に生まれて笑ってほしい


一杯のホットミルクを分け合った夜更けまぶたに君の声ふる


パレットの上で乾いた空色を雨の町まで溶かしにいこう


会いたくて会いたくなくてあの頃に流行った歌を繰り返し聴く


秋の絵を君がどこかで描いてたらいいなと思う色の夕焼け


旧姓で実家に届く郵便がこだまのようにだんだんと減る


色あせた布張りの本手にとればその感触がもう物語


風のなか夏の終わりを君が抱き秋の初めを私が掴む


君去りし後の坂道あかね色だれも待たないバス停の影


生んだヒト生まれたヒトが一列に並んで次の命に祈る


公園のオブジェのように漠然と不気味で無難な言葉を残す


サヨナラを決めて無数の水滴がいつもの日々を閉じ込めて散る


聴かせたい歌や着せたい洋服やおもちゃもあるよ生まれておいで


りんご飴つやつや並ぶ店先で作り話の思い出を買う


夢で抱く君は小さく髪の毛に指を通せば霧雨のよう


性別も顔つきもまだわからない我が子に似合う毛糸を探す


泣き顔をよく知っている君がもう泣かないような未来よ続け


まだ青いみかんの皮をむきながら二カ月先の別れを思う


目を閉じてその暗闇を見つめれば遠い記憶のメリーがまわる


思い出のなかの笑顔に貼っていた付箋が虹に変わる「久しぶり」


そびえ立つゴミ処理場の煙突が私の仰ぐ空を吸い込む


神さまのひざで泣きたい信じてることがなくならないから辛い


無いという前提がありスコップで湿気た地面をめくり続ける


足元をヘッドライトが行き交って命の透けていく歩道橋


夕暮れの砂場に刺さるスコップを忘れ続けて駆け戻れない


君に触れ痛みは消えて胸の奥あとからあとから祈りが湧くよ


世の中を味見程度に受け入れて見下すことも忘れずにいる


君のこと大事にしない人たちが嫌いで君を好きだと気付く


大人びた誤魔化し子どもじみた主張そんなことよりまずうなだれろ


青春をつかさどる君ゆめにでて不意に私を旧姓で呼ぶ


雨粒も枯れ葉もマスクもきらきらとおなかのなかに陽だまりがいて


見抜けない心ダイレクトに抱きしめて抱きしめてこの恋うつしたい


リュックには板チョコと地図一歩目は結び直した靴紐の向き


やがてくる大きな波を待ちながらまるく静かな海を見ている


あの青は渡れない青あきらめの悪い駈け足あざ笑う青


突き進む冒険家にはなれなくて昨日とよく似た今日を愛する


はしゃぎつつベビーベッドを組み立てるもうすぐ親になる子供たち


三日月を見上げて歩くシンプルな答えを見つけ出したい夜に


から元気だったとせめて気づいてね別れたことにしてあげるから


冷えきった朝の乾いた唇で封するようないってらっしゃい


砂煙あげて明るく立ち去った君の轍に溜まる雨水


買ってきたビデオカメラを構えれば早くもパパの表情になる


生まれくる時待つ日々の眠たさよ大丈夫だよ春はすぐそこ


ベビーカーベビーベッドに哺乳瓶あなたが帰る最初のおうち


待ちわびる心透明抱きしめたとき流れ込む色ではじまる


やわらかなパンちぎりつつ目が合えば思い出よりも明日の話


つかのまの日なたにベビー布団干し春を迎える準備はじめる


私からはみ出さないで生きてきた私が私じゃない人を産む


足音が近づいてきて張りつめる心臓ゆるむ頬ふりむこう


耳たぶはあなたで爪はわたしだね宝の地図を眺めるように


抱き上げて話しかければ眩しげに口をすぼめてその声を吸う


高く広く澄みきった青うでのなか生まれて初めて目に映す空


スプーンでたっぷりすくうポタージュのようにあなたの視線をたべる


花びらや木の実や雪や貝殻を始めて握るその手のひらに


音のない窓を横ぎる飛行船きみが生まれた日の昼下がり


笑顔より先に泣き顔から出会う我が子にかける言葉を探す


記憶には残らなくても意味がまだ分からなくても今日から家族


まだ春を知らぬ我が子がまず冬の眩しさを見る窓ごしの雪


これが君の手だよ足だよ太陽を力いっぱい捕まえにゆけ


いつの間に春の光を歩いてた重いコートとブーツのままで


絹糸の寝息に巻かれ月明かり子を抱いたまま青白い繭


子に乳をむさぼられつつサバンナのあらゆる雌と話がしたい


子を乗せて漕ぎだすボート方角も時間も失くしている霧の中


子守唄くちずさみつつ体温と呼吸と頬の色で会話する
# by papiko-gokko | 2001-01-01 23:53 | 短歌まとめ

青白い手持ち花火を傾けて夜に笑顔を焼き付けた夏


幼い日かるい気持ちで背に負った取り外せない羽を引きずる


公園の時計みやれば夜空から届き続ける昔の光


容赦ない夏の陽射しに伝えないままの言葉が炙りだされる


眠るまでお話してよ僕だけがよく知っているあの物語


流れゆく見飽きた景色だれからも視線をそらすために眺める


君の目を見つめ返せば向かい風なぎ倒される大事な言葉


テーブルのカナブンそっと捕まえる君の手つきが少年になる


ありがとう優しい忠告ごめんなさい正しい仕打ちさようなら辞書


憧れは容易く恋に変わるけど手に入らない愛はいらない


待つことを選ぶ真夏のはじまりに木陰で食べるソフトクリーム


男性用下着売り場を歩く時あなたの妻になったと思う


千切れそうなのがせつなさ千切れても痛くなくなることがさみしさ


見抜かれているのだろうかコーヒーをかき混ぜる手が鼓動に触れる


生活にまみれて仰ぐ青空は洗濯物と遠い約束


くちばしの色はとびきり鮮やかに君の強がりついばむ為の


植物が育つ職場の窓際を羽虫のように這うタイプ音


抱き合えば身体の熱が傾いて幸福感がなだれを起こす


いい加減しゃべり疲れているけれどまだ相づちの数が足りない


手をつなぐコンビニからの帰り道21世紀初頭の恋に


つねるのもつねられるのも好きなんてどうかしてるね恋をしてるの


君の来た朝は無性に恥ずかしいラジオ体操第二が嫌い


夏休みぜんまい仕掛けの恋心ちからいっぱい君に投げだす


純情を最初で最後の武器にして焼けた浜辺に零すサイダー


何もかも夏のせいなら息切れのキス海風に溶けるのを待つ


言い訳も今更だから酔わせてよ貴方ひとりの悪女になろう


「ただ聞いて欲しかったの」が通じない話せば君は救おうとする


傷つけたつもりなのにないつまでも優しく歩幅あわせないでよ


日常に君が与える緊張を恋と名付けてリボンを結ぶ


泣くことと立ち直ること繰り返す 大人になってもう六年目


潮風を知ったパラソル折りたたむ誰も待たない私に戻る


クリックが舌打ちのよう満足のいく情報ははここにもないや


明日以降わらい話にするべきか洗面台に映す泣き顔


何もかも打ち明け合いたい完全に他人でいたいカウンター席


死にたいと呟くぐらい見逃せよ死にたいわけがないだろうバカ


起きぬけに君と競って飲み干したペットボトルのラベルをはがす


携帯が震え続ける私のじゃない携帯がテーブルの隅


新しい色の絵の具が欲しくなる君の町にも秋がくるころ


この空とあしたの天気予報だけ知ってる僕に届く絵葉書




輪切りしたパイナップルにかぶりつく強く静かに雨の降る夜


あの人の声が震わす寝不足の頭の奥に降るふくらし粉


浅はかな憧れ集め歩く街みつけ疲れた僕をみつけて


いいわけの札だけ立てて捨て去って幾つ花壇を台無しにした


まんまるのケーキ切り分け笑いあう貴方と共に生きていくこと


雨上がり思いがけない青空がはじまる雲の切れ間を探す


怒りではなく悲しみの表情で叱られている うっせぇばばぁ


息深く吸えば排気ガスの臭い汚れて生きる覚悟はできた


あの日だけ綺麗に残し遠ざかる季節が君を切り絵に変える


降り続く雨がすべてを懐かしくする庭先に濡れるコスモス


菊ばかり並ぶ花屋を横ぎって昨日まがいの今日を始める


懐かしい愛に心を横たえるリンゴを剥いてもらうひと時


貴方から貸してもらったジャケットで温めすぎた身体がだるい


休日は何をしてるの待つ事と忘れる事と退屈してる


コンビニの棚が季節を変えるたびぽつりと思う もうそんな時期


はじまりの時から続く暗闇を抜け遺伝子が世界に触れる


水溜まりゆらりと避けて月曜の朝は昨日の夢が友達


「ほらもっとひっつきなよ」とデジカメのシャッターを押す指が震える


可笑しくてやがて泣きたくなるようなケンカのあとのまぬけなおなら


水滴でタイルに君の名を書いてひとりぼっちの深みにはまる


風邪気味の君が気になる風邪気味の君を心配してるアイツも


金曜日空けておいてと別れぎわ日付の森に明かりが灯る


君を待つ気配がすでに懐かしいカゴの壊れた自転車できて


闇雲にからだとからだ繋ぐほど同じ度合いのひとりぼっちだ


からっぽの卵をじっとあたためてひび割れるのは私の心


足首を撫でるさざ波なまぬるく水平線に溶けだす螺旋


三日月に分けてもらった引力で君によく似た子を夢で抱く


一面に濡れた落ち葉が膜を張る誰も知らない明け方の雨


ひとりでは抱えきれない東京をぶれた写真でお送りします


現状に決着よりも折り合いをつけて進もう幸せが好き


この国のどこを居場所と決めて住むコンビニだけがいつも親しい


去る人の背中は強く正しくて手を振る場所で石になりたい


欲しいのはきわどい秘密もっともっと僕の事情に深入りしてよ


肩の雪はらい落とせば指先を君と歩いた時間が濡らす


気だるさと明るさ眠い目をこすりハンドル握る始まりの朝


モノクロの写真しずかに青ざめて過ぎた昨日は死よりも遠い


ブレーキを踏むタイミングだけ上手い恋の手前でハンドルを切る


願いごと吸って膨らむ初恋の人の背中は星空のよう


舞い上がる雪が世界の境目を消してあなたの足音を待つ


あたらしい光あなたと歩く朝ふたつ並んだ影によろしく


青空をカーテン越しに持て余す休日真昼のバスでいこうよ


出勤の服が決まらずあの人に好かれてみたい自分に気づく


ラブレターもしもお返事くれるならあなたの選ぶペンは何色


平然と受け取ってほしいのに君がドキドキしたらドキドキするよ


抱き合って宇宙を交換するあいだ笑えるくらい真面目な身体


きっかけをつかめないまま時が過ぎ誰も見てないテレビが笑う


甘ったれ飽きて眠たい我々は称えるよりも叩くのが好き


今日限り私を終えると知っていたようにまっすぐ落ちる髪の毛


公園のすべり台から夕焼けが子鬼のように近づいてくる


携帯を二つに割ったエピソード自慢した人これでふたり目


カーテンじゃ隠し切れない真夜中が朝に向かって青ざめていく


関係を清めるための接近を指きりげんまん以上キス未満


あくまでも優等生でいる私ここにいなくていいのに私


太陽というより君はいつまでも静かに降り続いてほしい雨


教室のおへそは君の後頭部わたしの視線へその緒になれ


正しさを説明できぬ人たちが集い興じる間違い探し


くだものを積極的に取りましょうアダムとイブをお手本にして


熱唱を採点されて冷やされる魂タバコくさい箱の中


ポケットにチョークのかけら潜ませて彼はだれかに探されにゆく


約束のひとつくらいは果たされて君と私の千年むこう
# by papiko-gokko | 2001-01-01 23:22 | 短歌まとめ

短歌801~900(2009年)


朝焼けの電車でおいで眠い目に見たことも無い緑をあげる


風向きが悪かったんだ一度きり横切ったのに髪を気にした


誰の目が僕を減点するだろう今日は何処から失格だろう


臆病と思い上がりに挟まれて二〇センチの距離を維持する


なにもかも駄目になったら行くからね僕の天使は屋上にいる


まだなにも聞かないでいていつもより時間をかけてうがいをさせて


やがて止む雨を見ている軒下でとぎれとぎれの会話が続く


なぞられるほど球体に近づいて転がりだしてしまう 砕いて


思い出すことがたくさんありすぎて夏の終わりの日なたスキップ


君と僕だけが知り得る学問の研究室を手に入れた夏


優しさが複雑にする関係のみんなで吊るす爆破スイッチ


上の空いつもどこかに帰りたい私を射抜く矢印は時


パイプ椅子音もたてずに折りたたむように日暮れの家路を辿る


見たりない話し足りない君といる限り嫌いな「おやすみなさい」


すべてから遠ざかりたい足音を響かせながら泳ぐ地下街


優しさで計算された去り際の余韻のしっぽ踏んづけてやる


青空の下の沈黙きみの手を濡らし始めるソフトクリーム


割増の深夜タクシー メーターが恐くなくなるまで走ってよ


全力で君の仕草を駆け抜ける校庭一周分の欲望


さっき来たイチョウ並木を引きかえす 結末をまだ用意できない


時間軸ぐんとしならせ高跳びで昨日の背中蹴飛ばしにゆく


楽しくて全部そろっているけれど どれもこれもが前ほどじゃない


謎めいた君の机の引出しに滑り込ませるため書く手紙


戦いを挑んでみては思い知る敗北感に恋が紛れる


東京で愛され葱のみじん切り上達しちゃったから帰れない


増えていく電化製品常備薬そろいの食器ふたりの暮らし


夕暮れのひとちがい皆それぞれに遠い誰かの面影を持つ


眠れない夜はウサギのいる絵本はしゃいだ夜は小熊の絵本


静けさは誰もが眠るからじゃなく眠れぬ人がそれを聞くから


パレットに出しすぎたアオ使い切るただそのために目指す海岸


強く強く風吹く時刻きみの名を裂いてさらわれたくて叫んだ


がんばった昨日もなにもない今日もメダルのような夕日がひとつ


行き先と帰る時間を伝えたい人を探しに出かけてきます


板チョコを通勤バックに潜ませて自由を手放さないおまじない


春を背に芽生えた君の屈折をゆるく肯定する坂の道


安全な平均台に腰かけて数えるものはいくらでもある


似合う色よりも互いの好きな色みつかりそうな距離の日曜


手を振って振ったその手でしがみつく思い出ぼくを裏切らぬもの


取り返しつかない夜の真ん中でふたり冴え冴え星空談話


誰に何を伝えようとも思わない 儀式のようにピクルスを抜く


「ありがとう」より的確な挨拶を探せばそれは「大好き」になる


君だけはこれから先も旧姓で呼んでください封印として


はじめから違うふたりの大切をひとつの箱に並べて仕舞う


少しだけ好きだったかもしれなくて冷やかしすぎてしまう おめでとう


くすくすと僕の身体をちらかして愛の意味だけきれいに残す


純白の前夜きれいになったねと君に言わせてから巣立ちたい


封筒に郵便切手をはるまでは私に届きつづける手紙


会いたいねまた会いたいねいつまでも会いたいねって言い合いたいね


コンビニでビニール傘を買って差す雨の日はじまらない物語


さよならの準備段階夕暮れの電信柱かぞえて歩く


探しものなら降りしきる雨のなか失くしたものはひだまりのなか


先生の三角定規追いかけて視線の交わる点を求めよ


握力も靴のサイズも平熱も知っているのに聞けないメアド


生きるのに僕は夢中で無気力で待ちくたびれて幻を見る


追憶と理想を胸にカウボーイ張りぼて荒野はいつも夕暮れ


正当な前売り券を持つ人に嫉妬しながら闇を横切る


泣いた眼に流れる雲が新しい なんてことない一日だった


手を振って一人乗りこむタクシーの骨格を這うAMラジオ


懐かしいような夕焼け毎日は単調だけど単純じゃない


最高の角度で君に見せたくて今日の陽射しを使い果たした


ケンカするまえに笑顔で火にかけたシチューが煮えていい匂いだね


憧れを夏に焼かれて僕達は過ぎた祭りのうちわで扇ぐ


あいまいに君が示したさよならの型をとるため涙ながすの


向かい合うほどに言葉は愛よりも卑怯な嘘とたやすく馴染む


恥じらいと不誠実からカタカナで送る『ゴメンネ』 許さないでね


作戦は実行寸前までいってその横顔でUターンする


ふわふわと甘いあいづち打つあの子だまらせたくてムカデの話


街じゅうに春がきている大げさなあくびの後にため息が出る


見つけたらメールください懐かしい丘の向こうに新しい虹


MPがいつも足りない僕たちの遊びはやがて祈りに変わる


月曜日あらゆる菓子パンにも飽きて定期更新おはよう諸君


学ランの似合った君の面影が無精髭から蝕まれゆく


笑うのも泣くのもなにか違う気がして口ずさむ旅立ちの歌


厳密に守らなければ死ぬのなら転ばないのに日々は優しい


日常に私ひとりの哲学を見出すために買ったサボテン


作戦は実行寸前までいってその横顔でUターンする


美しく割れて散らばり割れる日をめがけて生きた百円グラス


満開の桜並木で金髪の若者が撮るはんぱねえ春


渾身の桜吹雪が目覚めない君の窓にも吹きこむだろう


のびていく影を見つめて歩こうよ打ち明けながら川沿いの道


あの町にセブンイレブンできたこと伝えそびれて半月が経つ


背中から汗ばむ朝は暑がりの君が脱ぎたい服を着せたい


「ごめん」ではなく「やめよう」と力なく目を背けあういつもの部屋で


黒鉛の匂いが染みたノートには君の視界が広がっている


人生の意味など熱く語ろうと明日は雨降り傘さす猫背


電話して笑って切って静まってかける前より寂しくなった


大げさに生きてわめいて笑われて誰か振り向くならそれでいい


冒険の続きはあした安心を補充するため家へ帰ろう


いつのまに大人だけれど夕焼けが淋しいみんないつかの子供


吹きぬける風に空耳きみの声まだひらがなで呼び合ったころ


庭先の紫陽花なぜかこの家をよく知っているような気がする


ゆるやかな吐き気を抱いて散らかった早朝の街だれの太陽


ため息と愛想笑いと生あくび量産しても平和が好きさ


目立つでも役に立つでもなく続く一日いくつ決め事まもる


君のこと好きでいるのが好きだからデートコースは何処だっていい


淡々とやりすごせない打ち消した熱が湿った窓枠を這う


水彩の絵ハガキよりも近くまで来ているんだと電話がほしい


お別れに君の口ぐせもらいます他には何も盗めなかった


激安の夕暮れスーパーマーケット青が短い横断歩道
# by papiko-gokko | 2001-01-01 23:18 | 短歌まとめ