日記と短歌
by papiko
短歌901~1000(2009年~2010年)
青白い手持ち花火を傾けて夜に笑顔を焼き付けた夏


幼い日かるい気持ちで背に負った取り外せない羽を引きずる


公園の時計みやれば夜空から届き続ける昔の光


容赦ない夏の陽射しに伝えないままの言葉が炙りだされる


眠るまでお話してよ僕だけがよく知っているあの物語


流れゆく見飽きた景色だれからも視線をそらすために眺める


君の目を見つめ返せば向かい風なぎ倒される大事な言葉


テーブルのカナブンそっと捕まえる君の手つきが少年になる


ありがとう優しい忠告ごめんなさい正しい仕打ちさようなら辞書


憧れは容易く恋に変わるけど手に入らない愛はいらない


待つことを選ぶ真夏のはじまりに木陰で食べるソフトクリーム


男性用下着売り場を歩く時あなたの妻になったと思う


千切れそうなのがせつなさ千切れても痛くなくなることがさみしさ


見抜かれているのだろうかコーヒーをかき混ぜる手が鼓動に触れる


生活にまみれて仰ぐ青空は洗濯物と遠い約束


くちばしの色はとびきり鮮やかに君の強がりついばむ為の


植物が育つ職場の窓際を羽虫のように這うタイプ音


抱き合えば身体の熱が傾いて幸福感がなだれを起こす


いい加減しゃべり疲れているけれどまだ相づちの数が足りない


手をつなぐコンビニからの帰り道21世紀初頭の恋に


つねるのもつねられるのも好きなんてどうかしてるね恋をしてるの


君の来た朝は無性に恥ずかしいラジオ体操第二が嫌い


夏休みぜんまい仕掛けの恋心ちからいっぱい君に投げだす


純情を最初で最後の武器にして焼けた浜辺に零すサイダー


何もかも夏のせいなら息切れのキス海風に溶けるのを待つ


言い訳も今更だから酔わせてよ貴方ひとりの悪女になろう


「ただ聞いて欲しかったの」が通じない話せば君は救おうとする


傷つけたつもりなのにないつまでも優しく歩幅あわせないでよ


日常に君が与える緊張を恋と名付けてリボンを結ぶ


泣くことと立ち直ること繰り返す 大人になってもう六年目


潮風を知ったパラソル折りたたむ誰も待たない私に戻る


クリックが舌打ちのよう満足のいく情報ははここにもないや


明日以降わらい話にするべきか洗面台に映す泣き顔


何もかも打ち明け合いたい完全に他人でいたいカウンター席


死にたいと呟くぐらい見逃せよ死にたいわけがないだろうバカ


起きぬけに君と競って飲み干したペットボトルのラベルをはがす


携帯が震え続ける私のじゃない携帯がテーブルの隅


新しい色の絵の具が欲しくなる君の町にも秋がくるころ


この空とあしたの天気予報だけ知ってる僕に届く絵葉書




輪切りしたパイナップルにかぶりつく強く静かに雨の降る夜


あの人の声が震わす寝不足の頭の奥に降るふくらし粉


浅はかな憧れ集め歩く街みつけ疲れた僕をみつけて


いいわけの札だけ立てて捨て去って幾つ花壇を台無しにした


まんまるのケーキ切り分け笑いあう貴方と共に生きていくこと


雨上がり思いがけない青空がはじまる雲の切れ間を探す


怒りではなく悲しみの表情で叱られている うっせぇばばぁ


息深く吸えば排気ガスの臭い汚れて生きる覚悟はできた


あの日だけ綺麗に残し遠ざかる季節が君を切り絵に変える


降り続く雨がすべてを懐かしくする庭先に濡れるコスモス


菊ばかり並ぶ花屋を横ぎって昨日まがいの今日を始める


懐かしい愛に心を横たえるリンゴを剥いてもらうひと時


貴方から貸してもらったジャケットで温めすぎた身体がだるい


休日は何をしてるの待つ事と忘れる事と退屈してる


コンビニの棚が季節を変えるたびぽつりと思う もうそんな時期


はじまりの時から続く暗闇を抜け遺伝子が世界に触れる


水溜まりゆらりと避けて月曜の朝は昨日の夢が友達


「ほらもっとひっつきなよ」とデジカメのシャッターを押す指が震える


可笑しくてやがて泣きたくなるようなケンカのあとのまぬけなおなら


水滴でタイルに君の名を書いてひとりぼっちの深みにはまる


風邪気味の君が気になる風邪気味の君を心配してるアイツも


金曜日空けておいてと別れぎわ日付の森に明かりが灯る


君を待つ気配がすでに懐かしいカゴの壊れた自転車できて


闇雲にからだとからだ繋ぐほど同じ度合いのひとりぼっちだ


からっぽの卵をじっとあたためてひび割れるのは私の心


足首を撫でるさざ波なまぬるく水平線に溶けだす螺旋


三日月に分けてもらった引力で君によく似た子を夢で抱く


一面に濡れた落ち葉が膜を張る誰も知らない明け方の雨


ひとりでは抱えきれない東京をぶれた写真でお送りします


現状に決着よりも折り合いをつけて進もう幸せが好き


この国のどこを居場所と決めて住むコンビニだけがいつも親しい


去る人の背中は強く正しくて手を振る場所で石になりたい


欲しいのはきわどい秘密もっともっと僕の事情に深入りしてよ


肩の雪はらい落とせば指先を君と歩いた時間が濡らす


気だるさと明るさ眠い目をこすりハンドル握る始まりの朝


モノクロの写真しずかに青ざめて過ぎた昨日は死よりも遠い


ブレーキを踏むタイミングだけ上手い恋の手前でハンドルを切る


願いごと吸って膨らむ初恋の人の背中は星空のよう


舞い上がる雪が世界の境目を消してあなたの足音を待つ


あたらしい光あなたと歩く朝ふたつ並んだ影によろしく


青空をカーテン越しに持て余す休日真昼のバスでいこうよ


出勤の服が決まらずあの人に好かれてみたい自分に気づく


ラブレターもしもお返事くれるならあなたの選ぶペンは何色


平然と受け取ってほしいのに君がドキドキしたらドキドキするよ


抱き合って宇宙を交換するあいだ笑えるくらい真面目な身体


きっかけをつかめないまま時が過ぎ誰も見てないテレビが笑う


甘ったれ飽きて眠たい我々は称えるよりも叩くのが好き


今日限り私を終えると知っていたようにまっすぐ落ちる髪の毛


公園のすべり台から夕焼けが子鬼のように近づいてくる


携帯を二つに割ったエピソード自慢した人これでふたり目


カーテンじゃ隠し切れない真夜中が朝に向かって青ざめていく


関係を清めるための接近を指きりげんまん以上キス未満


あくまでも優等生でいる私ここにいなくていいのに私


太陽というより君はいつまでも静かに降り続いてほしい雨


教室のおへそは君の後頭部わたしの視線へその緒になれ


正しさを説明できぬ人たちが集い興じる間違い探し


くだものを積極的に取りましょうアダムとイブをお手本にして


熱唱を採点されて冷やされる魂タバコくさい箱の中


ポケットにチョークのかけら潜ませて彼はだれかに探されにゆく


約束のひとつくらいは果たされて君と私の千年むこう
# by papiko-gokko | 2001-01-01 23:22 | 短歌まとめ
短歌801~900(2009年)
朝焼けの電車でおいで眠い目に見たことも無い緑をあげる


風向きが悪かったんだ一度きり横切ったのに髪を気にした


誰の目が僕を減点するだろう今日は何処から失格だろう


臆病と思い上がりに挟まれて二〇センチの距離を維持する


なにもかも駄目になったら行くからね僕の天使は屋上にいる


まだなにも聞かないでいていつもより時間をかけてうがいをさせて


やがて止む雨を見ている軒下でとぎれとぎれの会話が続く


なぞられるほど球体に近づいて転がりだしてしまう 砕いて


思い出すことがたくさんありすぎて夏の終わりの日なたスキップ


君と僕だけが知り得る学問の研究室を手に入れた夏


優しさが複雑にする関係のみんなで吊るす爆破スイッチ


上の空いつもどこかに帰りたい私を射抜く矢印は時


パイプ椅子音もたてずに折りたたむように日暮れの家路を辿る


見たりない話し足りない君といる限り嫌いな「おやすみなさい」


すべてから遠ざかりたい足音を響かせながら泳ぐ地下街


優しさで計算された去り際の余韻のしっぽ踏んづけてやる


青空の下の沈黙きみの手を濡らし始めるソフトクリーム


割増の深夜タクシー メーターが恐くなくなるまで走ってよ


全力で君の仕草を駆け抜ける校庭一周分の欲望


さっき来たイチョウ並木を引きかえす 結末をまだ用意できない


時間軸ぐんとしならせ高跳びで昨日の背中蹴飛ばしにゆく


楽しくて全部そろっているけれど どれもこれもが前ほどじゃない


謎めいた君の机の引出しに滑り込ませるため書く手紙


戦いを挑んでみては思い知る敗北感に恋が紛れる


東京で愛され葱のみじん切り上達しちゃったから帰れない


増えていく電化製品常備薬そろいの食器ふたりの暮らし


夕暮れのひとちがい皆それぞれに遠い誰かの面影を持つ


眠れない夜はウサギのいる絵本はしゃいだ夜は小熊の絵本


静けさは誰もが眠るからじゃなく眠れぬ人がそれを聞くから


パレットに出しすぎたアオ使い切るただそのために目指す海岸


強く強く風吹く時刻きみの名を裂いてさらわれたくて叫んだ


がんばった昨日もなにもない今日もメダルのような夕日がひとつ


行き先と帰る時間を伝えたい人を探しに出かけてきます


板チョコを通勤バックに潜ませて自由を手放さないおまじない


春を背に芽生えた君の屈折をゆるく肯定する坂の道


安全な平均台に腰かけて数えるものはいくらでもある


似合う色よりも互いの好きな色みつかりそうな距離の日曜


手を振って振ったその手でしがみつく思い出ぼくを裏切らぬもの


取り返しつかない夜の真ん中でふたり冴え冴え星空談話


誰に何を伝えようとも思わない 儀式のようにピクルスを抜く


「ありがとう」より的確な挨拶を探せばそれは「大好き」になる


君だけはこれから先も旧姓で呼んでください封印として


はじめから違うふたりの大切をひとつの箱に並べて仕舞う


少しだけ好きだったかもしれなくて冷やかしすぎてしまう おめでとう


くすくすと僕の身体をちらかして愛の意味だけきれいに残す


純白の前夜きれいになったねと君に言わせてから巣立ちたい


封筒に郵便切手をはるまでは私に届きつづける手紙


会いたいねまた会いたいねいつまでも会いたいねって言い合いたいね


コンビニでビニール傘を買って差す雨の日はじまらない物語


さよならの準備段階夕暮れの電信柱かぞえて歩く


探しものなら降りしきる雨のなか失くしたものはひだまりのなか


先生の三角定規追いかけて視線の交わる点を求めよ


握力も靴のサイズも平熱も知っているのに聞けないメアド


生きるのに僕は夢中で無気力で待ちくたびれて幻を見る


追憶と理想を胸にカウボーイ張りぼて荒野はいつも夕暮れ


正当な前売り券を持つ人に嫉妬しながら闇を横切る


泣いた眼に流れる雲が新しい なんてことない一日だった


手を振って一人乗りこむタクシーの骨格を這うAMラジオ


懐かしいような夕焼け毎日は単調だけど単純じゃない


最高の角度で君に見せたくて今日の陽射しを使い果たした


ケンカするまえに笑顔で火にかけたシチューが煮えていい匂いだね


憧れを夏に焼かれて僕達は過ぎた祭りのうちわで扇ぐ


あいまいに君が示したさよならの型をとるため涙ながすの


向かい合うほどに言葉は愛よりも卑怯な嘘とたやすく馴染む


恥じらいと不誠実からカタカナで送る『ゴメンネ』 許さないでね


作戦は実行寸前までいってその横顔でUターンする


ふわふわと甘いあいづち打つあの子だまらせたくてムカデの話


街じゅうに春がきている大げさなあくびの後にため息が出る


見つけたらメールください懐かしい丘の向こうに新しい虹


MPがいつも足りない僕たちの遊びはやがて祈りに変わる


月曜日あらゆる菓子パンにも飽きて定期更新おはよう諸君


学ランの似合った君の面影が無精髭から蝕まれゆく


笑うのも泣くのもなにか違う気がして口ずさむ旅立ちの歌


厳密に守らなければ死ぬのなら転ばないのに日々は優しい


日常に私ひとりの哲学を見出すために買ったサボテン


作戦は実行寸前までいってその横顔でUターンする


美しく割れて散らばり割れる日をめがけて生きた百円グラス


満開の桜並木で金髪の若者が撮るはんぱねえ春


渾身の桜吹雪が目覚めない君の窓にも吹きこむだろう


のびていく影を見つめて歩こうよ打ち明けながら川沿いの道


あの町にセブンイレブンできたこと伝えそびれて半月が経つ


背中から汗ばむ朝は暑がりの君が脱ぎたい服を着せたい


「ごめん」ではなく「やめよう」と力なく目を背けあういつもの部屋で


黒鉛の匂いが染みたノートには君の視界が広がっている


人生の意味など熱く語ろうと明日は雨降り傘さす猫背


電話して笑って切って静まってかける前より寂しくなった


大げさに生きてわめいて笑われて誰か振り向くならそれでいい


冒険の続きはあした安心を補充するため家へ帰ろう


いつのまに大人だけれど夕焼けが淋しいみんないつかの子供


吹きぬける風に空耳きみの声まだひらがなで呼び合ったころ


庭先の紫陽花なぜかこの家をよく知っているような気がする


ゆるやかな吐き気を抱いて散らかった早朝の街だれの太陽


ため息と愛想笑いと生あくび量産しても平和が好きさ


目立つでも役に立つでもなく続く一日いくつ決め事まもる


君のこと好きでいるのが好きだからデートコースは何処だっていい


淡々とやりすごせない打ち消した熱が湿った窓枠を這う


水彩の絵ハガキよりも近くまで来ているんだと電話がほしい


お別れに君の口ぐせもらいます他には何も盗めなかった


激安の夕暮れスーパーマーケット青が短い横断歩道
# by papiko-gokko | 2001-01-01 23:18 | 短歌まとめ
短歌701~800(2007年~2008年)
夕焼けに試されている今日なにか言いそびれてはいないか君に


パーキング脇に転がるコーヒーの缶の虹いろ蹴りながら行く


僕の好く君は黄色い春が好きフレアスカートくもらせながら


思いやるしぐさも思いきるふりも上手じゃなくて友達でいる


君の目に留まったのならそれきりで失くして帰りたかったブローチ


最果てを見たい心で最後尾各駅停車池袋行き


降りてゆく人ばかりいる夕暮れの下り列車はカーブを愛す


噛みしだく耳たぶ胸に吹きすさぶ悪意を君は聞いちゃいけない


持ち物の趣味が変わったことなどの理由を見つめながらおどける


住むことのないアパートの片隅にピザ屋のバイク居て去ったこと


待ち人の手にくるまれた約束が春をめがけてやぶられていく


今欲しいものをさらりと言い当てる君の見ている私を見たい


携帯をしまえよ愛想笑いよせ僕の鼓動を舐めないでくれ


一日のとどめのような夕焼けにそこらじゅうから孤立する影


電話だとぶっきらぼうな私たち月を見ながら話しませんか


冷蔵庫ひらいてしゃがみ込んだままふくらはぎから無気力が湧く


眠る人だけを静かに引き離し世界は常に新しい顔


元気かという問いかけにがんばっているよと微笑う そばに行きたい


見抜くより一緒に見失うほうが いずれにしても救えないなら


カラフルなグラフ貼りだし背後にはパーセンテージ振り切れた空


おはようのたった一言交わすため時間配分綿密な朝


なんだっていいから君の行動の理由になってみたくて誘う


次々に色をつぎ足すパレットに僕の持ち得る自由のすべて


毎日がひねくれながら優しくて泣いてしまうし笑ってしまう


見出しから見出しへ見境もなく舞う羽化して蝶になった欲望


君とした会話をキスの回数が上回りそう今夜このまま


「いいよ」とは頷けなくて「どうだっていいよ」とそっぽ向いて笑った


春一番ぼくの背中を押しまくる全てそのまま背負っていけと


やぶっても誰も泣かない約束を季節のように守り続ける


間延びしたドラマは続く今日こそは明日こそはとくぐる校門


集まっておいでよ夏の公園に影を忘れて帰ったみんな


好きという基本事項に幾つもの問いを重ねて冴えわたる恋


あの人は冷えてもうじき向こう岸 ついたら波をひとつよこして


なるべくは好きでありたい人達に豆腐のような私で挑む


今ぼくは苛立っていて怒ってて鳩よ少しは脅えてくれよ 


出力の用紙サイズを間違えて真面目なままではみ出していく


淡々と低い耳鳴り連れたまま紙飛行機の飛ぶ教室へ


玄関でキスをするときつま先が子供じみても許してあげる


どうにでもなることばかり行儀よく悩んで何も質問はない


夕焼けがきれいで花が咲きそうで誰かあいさつ交わしませんか


有害であってたまるか初めての相合傘に降り注ぐ雨


そそくさと君が視線をそらすほど存在感に拍車がかかる


朝焼けに溶ける足取り粘ついて昨日もここで赤だったっけ


とっておきばかり身につけ前髪と沈黙ばかり気がかりだった


今だって会いたい君の懐かしむ過去から僕を追放してよ


雨の晩だれも知らない十字路のカーブミラーに私が映る


押入れを潜水艦にぼくたちの二段ベッドは海賊船に


音もなく加速していく残忍な子供の遊び 夢は医者です


思い出になることのない大半の過去が私の生を漂う


ささやかに生きる私のこだわりを君は見抜ける位置にいなさい


僕じゃない人の力で僕だけに君が教えた願いが叶う


酔いながらひとりよがりの夢をみて竜宮城のようなキヨスク


自転車の鍵にはメッキの剥げた鈴 守りきれない失くしきれない


霧雨に折りたたみ傘ひろげれば考えごとの数ほど独り


脱走を試みながら整然とタイムカードは鱗のように


ぼくのことどう思ってる?完璧な答えがあるのなら言わないで


今すぐに会いに行くから手土産はすみれの花とアイスクリーム


お母さん夢をデパート屋上の遊戯施設に置いてきちゃった


パラシュート着地できない夜ぼくの影があなたに落ちる確率


今ぼくの思い通りじゃないことを数えて歩くコンビニ帰り


曇らせてくれよ六月ここにある清く乾燥しきった別れ


冴えていく深夜パジャマの隙間から架空の羽をねじ込んで飛ぶ


帰りたい場所に吹く風アルコールわずかに含みながら口笛


ぶわぶわと音をやぶいて通過駅だれが僕から遠ざかったの


視界には同じ帽子のつば今日もうつむくほどに平和な世界


元気出せなんて言わないここにいて走りださないオニになりなよ


妹の楽譜ぱらりと彼女には彼女の淡い追憶がある


清らかな新郎新婦になるまえに嘘ひとつずつ交換しよう


マニュアルをあげよう僕を困らせず君が泣かずにすむ千ページ


あてもなく忘れられないひまわりの庭を追いかけ翳りゆく夏


繰り返すリズム踊ろう真上から照らせよいつか壊れるすべて


まだ浅い眠りの波を蹴散らして横顔のままあなたが笑う


すきまなく死に物狂いで輪になってお昼休みはみんなでごはん


いくつもの歌とひとつの物語 夢に降る雨カーテンコール


いいかげん向かっておいでまだこれをひとりごとだと思っているの?


酒臭い息で語っているかつて問われるごとにほころんだ夢


知りたいと知りたくないが交差して「元気ですか?」とだけ打つメール


ごめんそれ知らない言葉かみ砕くまで付き添って百年ぐらい


昨日までふざけてばかりいたくせに振るならもっと可憐にやれよ


急かされて歩幅も進む方向も悩み損ねた末の満席


ここからは君の呼吸がよく見える もうすぐで目を覚ましそうだよ


夕立ちののちの夕焼け夢ごごち閉じて滴る傘の実直


少しだけ先に大人になる僕の作り笑いを嫌っていてね


無期限の白い関係 近況を見失いたくなくて友達


自惚れと卑屈が同時に攻めてくる君にメールを打ち始めると


なぜそんなことを言うのかしちゃうのか知りたいけれど解りたくない


神さまも座敷わらしも鬼の子も人の暮らしの影かくれんぼ


おめでとうよりさみしいの一言が嬉しくてでも、だからサヨナラ


押し込んだ過去も畳んだ結末もだいなしにする君の優しさ


お別れの涙を分散するための一年三百六十五日


適量の涙を流し潰れない程度で耐えて夕焼けきれい


逃げたって生きていけると知りました以上かつての児童代表


有り余る音と光とタイミング街の合図を無視して走る


幸せか幸せだろう頷けよ幸せなんだ今世の中は


「銀行に行ってきまぁす」意図的にゆるめた語尾をオフィスに残す


言わなくていいことだった最後まで目をそらさずに言えないのなら


ご褒美にもらったアメを舐めながら甘え足らない心に気づく


長い長い恋をしたことそれもまた酔って語ればただエピソード


怒るでも媚びるでもなく雨の日の遠い案山子のような訴え


生い立ちをなぞる過程で君といる今を静かに特別視する
# by papiko-gokko | 2001-01-01 23:15 | 短歌まとめ


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