日記と短歌
by papiko
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まだまだ落ち着かない日々
 引っ越し後の荷ほどきが思い通りに進まなくて、つい、苛立ってしまいます。今日は夫が朝から仕事だったので、ひとりでぼちぼち進めました。妊娠してない状態の私ならば1時間でやれることを、今はゆっくり慎重に、半日かけてやっています。私の性格を知っている人たちみんなから「くれぐれも根を詰めないように」と繰り返し言われているので、がぁーっと一気にやってしまいたい衝動に駆られた時は、その人たちの顔を思い出して、なんとか気持ちを鎮めています。今日一日、何度も休憩や睡眠をとりながらぼちぼちやっていたら、それでもかなり片づきました。
 片付けている間ずっと、マイリトルラバーを聴いていました。引っ越し翌日の吉野屋以来、90年代のトップ10を飾った人たちの曲を聴くことにはまっています。発売当時から大好きだった『Hello, Again ~昔からある場所~』は、いつ聴いても何度聴いても新鮮です。日に焼けていた10代前半の私が、父の運転する車の窓枠に頬づえをつきながら、「りぼん」や「マーガレット」の主人公気分で好きな男の子を想いながらこの歌を聴いていたのを、当時みつけた力いっぱいの恋心と共に思い出します。あのころのカセットテープ、今も実家にあるかなぁ。

 昨日は夫と買いものへいき、まだ部屋が全然片づかないというのに、またブックオフの半額セールで絵本を買ってしまいました。これから生まれる子供にということで絵本をためらいなく買えることが、嬉しくて仕方ないのです。まず最初に選んだのは『くいしんぼうのあおむしくん』。夫と読んでみて、そのハチャメチャでありながら哲学的な結末に「えええー!」とふたりして驚き、これは買うしかないと即決しました。それから『うみキリン』。これは夫が気に入って買い、家に帰ってから私も読んで壮大なロマンを感じ、好きになりました。続いて『しずかでにぎやかなほん』。カラフルで抽象的な絵に、易しくて詩的な言葉、小さな子供にとって楽しい絵本かどうかわからないけれど、いろいろな年齢の時期に読み聞かせたいような内容です。最後に『10人のゆかいなひっこし』。これは文章がない、ちょっとした仕掛けのある絵本です。ちょうど引っ越したところだし、絵が可愛くて楽しかったので、買ってみました。
 こうして探せば探すほど、まだまだ欲しい絵本がいくらでもありそうです。働いていてお給料をもらえる今のうちに、たくさん買っておきたい!季節がよくなったら、木のおもちゃと絵本をうっとり堪能しに、吉祥寺の町へ繰り出すつもりです。
 午後の買い物では、バスで遠出して家具やさんへ行き、洗濯機用のラックやら、収納ボックスやら、拭けるランチョンマットやら、新居を快適にするためのこまごまとした日用品を買いました。それから、カーテンも注文しました。届くのが楽しみです。新居にはすべての窓に防犯用のシャッターがついていて、今はカーテンがないので一日中シャッターを閉めているのですが、やっぱりどうも、窓の外が見えないというのは、不安です。はやくカーテンをして、段ボールのなくなった部屋で、穏やかに過ごしたいなぁ。少しずつ、がんばろう。
by papiko-gokko | 2010-08-29 23:48 | Diary
地元民でもなく旅人でもなくてどこのベンチもしっくりこない
 通勤の道が新しくなり、電車の乗り方も変わって、緊張気味の毎日。一日目は初のバス通勤をしてみたら、降りることにしていた停留所が、その名前から想像していた場所とは全然違う見たことも無い大きな道のど真ん中で、仕方なく降りてみたもののさっぱりわからず、朝なので急ぎ足の人ばかりで誰に道を尋ねることもできず、泣きたいような笑いたいような気持ちでしばらく彷徨ってから、ようやく見つけたコンビニのおじさんに道を尋ね、なんとか遅刻せず会社にたどり着くことができました。その日の帰り道からは電車に切り替え、これまでより通勤時間が長くかかるようにはなったものの、座ることも出来てまずまず快適です。
 初めは覚えた手の道を間違えずに歩くので精一杯だったけれど、4日も通えば余裕もでてきて、今日は最寄駅近くにある図書館へ寄って帰りました。仕事でちょっと落ち込むことがあって、うつむき加減の帰り道だったのに、立派な図書館の、ガラス張りの向こうにずらりと並ぶ本が見えたら、それだけで、わぁっと、気分も顔も上向きになりました。館内に入り、カウンターで予約していた本を出してもらうころには、もうすっかり楽しくなって、会社で味わった辛い気持ちなど、遠くへとんでいっていました。楽しむ場所や学ぶ場所やくつろぐ場所、人の心のためにあるさまざまな場所のなかで、図書館という場所は、いつでも私の味方でいてくれる場所だなぁ。素晴らしい本に出会えなくても、欲しかった本が見つからなくても、そこへ足を運んだそのことだけで、日々のなかで知らず知らずのうちに生じていた自分自身のズレや捻じれが、矯正されていくような。子供が生まれてからも、ベビーカーを押して足繁く通おう。
 今回借りたのは、友達から勧められた作家さんの小説と、マタニティ体操の本。身体が硬いので、子供のころから体操とかマット運動って苦手なのだけど、安産のためにちょっと勉強してみようと思います。

 引越しのことで頭がいっぱいになっている間に、おなかの子が、むくむくと成長していき、昨日ふと鏡をみたら、引越し前よりも明らかにおなかが大きくなっていて、驚きました。こんな暑い暑い中で育ってくれていることに感動します。
 大きくなったおなかのなかで、なにやら動いているような感覚がたまにあります。ただ胃腸が運動しているだけのような気もするけれど、やっぱりちょっとそれとは違う気もして、これが胎動なのかどうかは、まだよくわかりません。この怪しい感覚には、二種類あります。コポンと大きな泡がはじけるような感じのときと、にゅるんにゅるんと、おなかの内側からへのへのもへじの絵でも描かれているような感じのとき。お腹の中で、一体何が起こっているのかな。
 お腹の膨らみが服の上からでもわかるようになってきたり、胎動っぽい気配を感じるようになるにつれ、お腹の子の存在を、身近に感じるようになりました。妊娠がわかったばかりのころは、お腹を見てもそこに命があるなんて実感なかなかわかなくて、遠い遠い宇宙にぽつんと発生した星のようなイメージだった命が、だんだんだんだんと、輪郭や質感をまといつつ、私の腕に向かって、近づいてきているような、そんな感覚。仕事中、話しかけることはできないけれど、片手でマウスを操作しながら、もう一方の手でお腹をさすっている回数は増えました。さすっていると、安心します。安心して、眠たくなります。なんだか妊娠してからというもの、嬉しくなっても、辛くなっても、感情が位置を変えるたびに、眠たくなるなぁ。沼に沈んでいくような重苦しい眠たさではなく、焼き立てパンの上で溶けていくバターのような、のびやかで性急な眠たさ。生まれるまでずっと、こんなふうに眠たいのでしょうか。心地よい眠気だから、それも、悪くないかも。
by papiko-gokko | 2010-08-26 23:34 | Diary
引っ越し 後編
 前の日記で引っ越しのことを最後まで書ききれなかったので、今日は前の記事の続きから。

 夫と義母の顔を見て現実の時間軸に引き戻され、ほうっとしているうちに、ふたりはテキパキとコンビニで買ってきたリビングの床に広げていき、3人でピクニックみたいに輪になって、これからの計画など話しあいながら、おにぎりやサンドイッチを食べました。赤飯のおにぎりを頬張りながら、私はまた眠たくなりました。声の響きすぎる部屋の中心で、夫と義母の会話が、近づいたり遠のいたりしました。
 食事を終えてしまったら、いよいよ私も家をでるときです。私が最後に家から持ってでたものは、ホウキとチリトリでした。本当は旅行に出かけるような足取りでキャリーバックを引っ張って出たかったのだけど、重たい荷物はみんな夫と義母が持ってくれたので、ちょっとそのへんでも掃いてくるような軽やかすぎる足取りで、私はホウキとチリトリを持って玄関をでて、義母の車に乗り込みました。その後はトランクに荷物を詰み込むことに夢中で、出発の瞬間に寂しさを感じる暇もなく、車は夫の運転で、これまで通った細い商店街の道を、ぐんぐん走り抜けていきました。
 新居へ向かうまえに、まず電気屋さんへ寄って新居につけるための電気を買い、それから家具屋さんで、カーテンを選びました。電気もカーテンも、これまでの家には趣味のよい備え付けのものがありそれを使っていたため、今回の引っ越しで新たに揃えなければならなかったのです。電気はすんなり決まったものの、カーテンは既成のサイズで間に合う窓が少なく、今回は寝室のカーテンだけ買って、あとの部屋は後日改めて注文することになりました。カーテンで部屋の雰囲気が決まるというし、慎重に選ぼう。
 最後の荷物と真新しい電気を抱えて新居に到着し、内見の日以来、初めて部屋に足を踏み入れました。玄関をあけると新居特有の無機質な香りがして、どの部屋も家具と段ボールでごったがえしていました。これをすべて開けて片付けていくのかと思うと、ちょっと気が遠くなるけれど、やるしかありません。前の家では魔法のように感じた引っ越しが、新居ではあくまでも過酷な現実として積み上げられているのでした。
 暑い中買い物をして3人ともくたくたになったので、ひとまずはクーラーをつけて休憩です。段ボールに埋もれるような形でその辺にあったテーブルの椅子にそれぞれ腰かけ、近くのコンビニで夫が買ってきてくれたアクエリアスを、ぐびぐび飲み干しました。私と夫はPAPICOも食べました。今年の夏初PAPICOでした。
 一息ついてから、義母と部屋を眺めてまわり、外の洗濯物干しを見た義母が「これは高すぎて、ぱぴこちゃんが干すときに危ないから、フックを買わなくちゃダメよ」と、夫に何度も言ってくれて、私にも、どんなふうに干せば安全かを教えてくれて、ふんわり甘い気持ちになりました。前の家で悩まされた押し入れのカビについても、「この場所ならカビないから大丈夫よ」「北側や窓に近い収納は、角に段ボールを張っておくと少しは違うよ」と、教えてくれました。私たち以上に私たちの生活空間について親身になって考えてくれる人が身近にいてくれるんだなぁと感じるだけで心強いし、急激な環境の変化に戸惑いつい尖りそうな心を、優しくなでられているような安心感に包まれます。
 暑い盛りを少し過ぎたころ朝から一日手伝ってくれた義母は、車で帰っていきました。かなりくたくたになっただろうなぁ。それから間もなくガス屋さんとNTTの人がやってきて、慌ただしく作業をして去っていきました。NTTの人が帰ったあとにすぐ私は自分と夫のパソコンを起動してネット接続の設定をはじめ、夫はコンビニに、夜ごはんを買いに出かけました。まだ何もかもが段ボールのなかにあってとても自炊のできる状況ではなかったので、夜もコンビニ弁当です。段ボールに囲まれて食べるコンビニ弁当は、いかにも非日常的で、お腹は空いているはずなのにあっという間に満腹になり、落ち着かなくて、麦茶を何杯も飲みました。
 気持ちが落ち着かなかったのは、食事の後にもうひとつ大事な行事が待っていたからでもありました。引越しに関するあらゆる事のなかで私にとって最も憂鬱だった行事、同じマンションの方への挨拶まわりです。私が泡を吹きそうなほど緊張していたので、チャイムを鳴らすのも、最初に挨拶の言葉を述べるのも、すべて夫がやってくれて、私はひたすら精一杯の笑顔で「よろしくお願い致します」と頭を下げました。夫もかなり緊張していたようで、声がいつもより高く、早口で、若干噛んでいました。だけど私よりは、よほどしっかりと大人の挨拶をしていました。中にはつれない反応の人もいて、人間なんて・・・と心が折れそうになりましたが、一番どんな人か気になっていたご近所さんのチャイムを鳴らすと、「お風呂あがったばかりで、すみません」と、本当に今お風呂からでたばかりといった感じの濡れた髪をした可愛らしい女の人が、おしゃぶりを加えた男の子を抱えてでてきて、にこやかに対応してくださって、これには胸をなでおろしました。「うちも1月に子供が生まれるんです」と夫が言うと、「わぁ、そうなんですね。大変でしょうけれど、がんばってくださいね」と、励ましの言葉までかけてくださって、ちょっと感動しました。あぁ、よかった。なんとかやっていけそう。
 緊張の挨拶周りを終えたら、私も夫もどっと一日の疲れがでて、段ボールから適当な下着とパジャマを引っ張り出してお風呂に入り、しばらくぼんやりテレビをみて、夜10時半には布団に入りました。ベッドにいつものベッドカバーをかけ、いつもの枕を並べて、いつものタオルケットにくるまると、体中に安心感が広がりました。夫は私よりもずっと気を張っていたのでしょう。ベッドに横になるやいなや、お休みも言わずに、すぅかぁ寝息を立て始めました。
 しばらく寝付けなかった私は、見慣れない天井をしばらく見つめて心細くなり、前の家の天井を思い出そうとしてみてもすでに思い出せないことに寂しさを感じ、よたよたした気持ちで明かりを消しました。目を閉じると、先ほどまで思い出せなかったこれまでの家の情景がありありと浮かんできて、もうあの部屋がこの世界にないだなんてと思うと、親元を離れて初めてひとりで過ごした19歳の夜とそっくりの心細さを感じ、あやうく泣きそうになりました。これから私はここで母と離れてひとりで生活していくのだなぁと、なかなか明かりを消せずに硬く目を閉じたあの夜と、これから私はここで母親になって子供と生活するのだなぁと、明かりを消して夫の隣で目を閉じる夜、ふたつのスタートラインは、全然違うような気もするのに、どうしてこんなにそっくりなのだろう。

 そして翌朝。夜10時半に寝てしまったので、朝5時半に目が覚め、二度寝しようとしてもまったく寝付けず、横で夫もごそごそ寝がえりを打ち始めているのに気付いて、思い切って「目が覚めてしまったよ、朝散歩しようよ」と誘ったら、「お、いいね」と返事がかえってきました。
 一夜あけてみる新居は、前日よりも少しだけ、自分に歩み寄っているような感じがしました。まだまだお互いよそよそしさは抜けないけれど、あと数日もすれば、慣れてしまえるはずです。簡単な身支度をして、家をでると、夏の早朝らしい、清々しい風が吹いていました。熱帯夜続きの東京も、さすがに早朝は涼しいのだなぁ。まだ涼しかったおかげで気持ちに余裕を持って景色を眺めることができ、バス停や銀行の場所をチェックしながら歩きました。
 ちょっと歩いたら私も夫もお腹がぺこぺこになり、だけどもうコンビニ弁当には飽き飽きしていたので、白いご飯にお味噌汁の朝食を食べたくて、朝定食のある吉野家へ入り、この町で初めての外食をしました。私は納豆定食を、夫は焼き鮭の定食を注文し、その普遍的な美味しさに感動しながら食べました。お漬物も、味のりも、納豆卵も、お味噌汁も、白いご飯も、夫から分けてもらった鮭も、本当に美味しかった!吉野家では、なぜだか90年代のヒット曲がかかっていて、私がイントロで曲名をあてるたび、夫に驚かれました。90年代の特に後半は、私の愛してやまないキラメキJ-POP時代なのです。聴けて一番嬉しくなったのは、ASKA「はじまりはいつも雨」。夫と付き合い始めた日も雨が降っていたけれど、結婚式と今回の引っ越しは、晴天だったなぁ。これから先はこの歌を聴くたびに、引っ越し翌日早朝の吉野家を思い出すことになりそうです。
 爽やかな早朝散歩と吉野家の朝食で私も夫も元気がでて、午前中は荷解きをがんばりました。午後は夫だけ、前の家へ明け渡しの立ち会いに出かけて行き、私は家で昼寝をしました。明け渡しは滞りなく済んだようで、帰って来た夫は「これでやっと引っ越しに関することが終わった」と、心底ほっとした表情でビールを飲んでいました。夫は時間や出来事の流れにちょっと一区切りつけたいとき、ちゃかちゃかと自分でつまみを作って、ビールを飲む習性があります。
 日が暮れてから夫と再び、朝とは違う方向へ向かって散歩をしました。前の家に住んでいたころからご近所だった友達と、今回の引っ越しでさらにご近所になり、その友達がメールで「近所でお祭りをやっているよ」と教えてくれたのです。友達の教えてくれた場所に近づくにつれ、蝉の鳴き声の中にうっすら盆踊りっぽい音楽が混じり始め、盆踊りの曲が好きな夫のテンションがにわかに跳ね上がりました。盆踊りの曲はぐんぐん大きくなり、浴衣姿や団扇を持って同じ方向へ歩く人の数も多くなり、広々とした公園いっぱいに夜店が並ぶお祭り会場に到着しました。
 どの屋台も人でにぎわい、ソースや醤油の焼ける香りが漂い、公園の中心では、紅白幕の張られたやぐらを囲んで、盆踊りが繰り広げられて、桃色や黄緑の提灯がつるされ、夏祭りだなぁ!と、私も急激に楽しくなりました。楽しくなりすぎて感極まって、途中ちょっと声が上ずったほどです。屋台から少し離れた広場では、お祭りの派手な雰囲気や、夜に外でお友達と遊べるという特殊な状況にすっかりハイになった子供たちが、光る輪っかやらペンダントを身につけて、きゃっきゃと走り回っていました。ヨーヨーや金魚すくいなんもやはり人気のようで、子供たちが身を寄せ合い真剣な面持ちで覗き込んでいました。中学生ぐらいの男子グループや女子グループも何組か見かけて、あぁ彼らにとってこのお祭りは気になる子とすれ違えるかどうかにかかっているのだろうなぁなんて、勝手に妄想してきゅんきゅんしました。若いカップルも、御年配の人も、あらゆる人が集まっていて、みんな楽しそうで、お祭りっていいもんだなぁと思いました。そういえば前の家に引っ越したばかりのときも、たまたま近所で大きなお祭りをしていて、夫とふたりで観に行ったのを覚えています。引っ越した先のお祭りにいくと、町に早く馴染みたい気持ちが強まります。よし、来年もベビーカーを押して行こう。
 お祭りにいったあとは、コンビニ弁当を買って帰り、再びコンビニ弁当の夜ごはんを食べました。食べものへの思い入れのとても強い夫は、「もうコンビニ耐えられない明日からはなんとしても調理用具と食器類を出して普通の食事を食べる」と嘆いていました。私なんて大学一年生のころは、コンビニとお惣菜屋さんと吉野家とレトルトカレーとパスタをひたすら繰り返す日々だったというのに、まったくなんてグルメなんだろう。
 そんなふうにして、暑い暑いなか、なんとか終わった引っ越しの二日間。まだ荷解きしていない段ボールは山ほど残っていますが、母からも義母からもあまり根を詰めないようゆっくりやりなさいと言われたので、少しずつ少しずつ、片付けていくつもりです。
by papiko-gokko | 2010-08-23 23:29 | Diary
引っ越し 前編
 昨日、無事に引っ越しを終えました。
 引っ越し業者さんのくる予定時刻は朝7時から7時半で、夫は前日にセットした6時の目覚ましアラームと同時にぱっと眼を覚まして準備をはじめましたが、私は前日の夜、大きな変化に対する興奮のせいかなかなか寝付けず、6時40分まで布団のなかでぐだぐだしてしまい、夫を怒らせました。
 夫に急かされながら朝の準備をして菓子パンで朝ごはんを済まし、最後の最後の荷造りして、7時半ちょうどに、引っ越し業者さんが到着しました。やってきたのは、小麦色の肌に白い歯をした4人の若者たち。ここは湘南ビーチかしらと思うような爽やかな若者言葉で声をかけあって作業をする彼らはあまりに眩しく、眩しさにすっかり怖気づいてしまい、荷物運びに関する指示はすべて夫に任せて、ずっと部屋の隅っこで壁に爪をたて、両面テープを張ったあとを剥がす作業に専念していました。4人とも腕が夫の二倍ぐらいあり、あれよあれよというまに荷物も家具も運び出されて、私が部屋に背中を向けているうちに、姿を消していきました。
 搬出が終わりに近づいたころ、朝早い時間にも関わらず横浜から義母が手伝いにきてくれました。そして、台所など手の行き届いていなかったところを、ピカピカにしてくれました。私がやれば軽く1時間はかかったであろう汚れがあっという間に綺麗になって、世の中のおかあさんってすごい・・・!と感動しました。しゃがんでする掃除など今の私には特にしんどいので、義母がきてくれなかったら、あんなに綺麗にして出られなかっただろうと思います。
 搬出がすべて終わり、引っ越しトラックが新居へ移動するのにあわせて、夫と義母も、義母の車で新居へ向い、私は、NTT工事の立ち会いがあったため、からっぽの部屋に、しばらくひとり残りました。からっぽになった部屋は、遮るものの何もない窓という窓から陽射しが射しこみ、輪郭がぼやけそうなほど明るくて、不動産屋さんとはじめてこの家を訪れ「江國香織っぽい雰囲気!」とひと目ぼれした、あの日と同じ様子になっていて、あぁ、嘘みたいだなぁと思いました。さっきまで家にあったものがあっという間になくなってしまったことも嘘みたいだし、これまでこの家で夫と暮らしていた3年間そのものが、なんだか素敵な長い夢だったみたいにも思えて、魔法が一気に解けたような部屋に一人っきりで突っ立っていると、自分の今いる場所の感覚も時間の感覚もゆがんでみえました。床に携帯を落とすと、その音がガコンと部屋中に響き渡り、人の住んでいない家の気配を、はやくも放ちはじめていました。テーブルや本棚のないリビングも、何もない押し入れが開け放たれた和室も、ベッドのない寝室も、歯ブラシや洗顔道具のない洗面所も、もう、私と夫のいる家では、なくなっていました。
 NTTの人を待っているあいだ、初めのうちは、家全体にざっと掃除機をかけたりして過ごしました。どこから入って来たのか、台所に死にそうなハエが一匹いて、掃除機の音が近づくとちょっとだけ飛んで逃げすぐそこでまた着地し、また近付くとちょっとだけ飛んで、ひょろひょろと着地してを、繰り返していました。掃除機をかけてしまうとやることもなくなり、なにもない部屋の一体どこに座っていればいいのかわからなくて、しばらくうろうろさ迷ってから、日の当らない角っこをみつけて、そこに座りこみました。その場所は、友達が結婚祝いにくれた可愛いチェストの置いてあった場所でした。座りこんで携帯をいじっているうちに、うとうとしてきて、少し眠りました。目を覚ますと、先ほどまで台所にいたはずのハエが、和室の真ん中で、じっとしていました。てっきり台所を最後の場所にしたくて、掃除機中も頑なに動かなかったのかと思ったのに。ハエに妙な親近感を抱いているうちに、NTTの人がきて、なにやら回線をいじり、これまでつかっていたネット接続機械を回収して帰って行きました。
 NTTの人が帰ったのとほぼ同時に、夫と義母が、コンビニでお昼ご飯を買って家に戻ってきました。どうやら、搬入のほうも無事に終わったようです。

 あぁ、これはどうやら長くなりそうなので、続きはあした。
by papiko-gokko | 2010-08-22 22:37 | Diary
ありがとう
 明日はいよいよ、引っ越しする日。朝の割と早い時間帯から業者さんがきて、作業開始です。今週前半は、あまりの暑さに疲れ果て、家に帰ってからほとんど横になって過ごしてしまいました。幸い昨日から少し涼しくなったので、週前半のぶんを取り戻すべくがんばり、なんとかかんとか、すべての荷造りを終えることができました。
 少し前の日記で書いた、引っ越しを決めて以来わが家で起こる怪奇現象は、今もちょくちょく起こっています。変えたばかりのはずの洗面所の電気が急にチカチカしたり、夫の鍵が何の前触れもなくかかりにくくなったり、これまでずっと取れることのなかった頑丈なタオルかけの吸盤が、数日前はじめてガコンと取れたりしました。奇妙だけど、不思議と恐くはありません。なんだか心が通じたようで、ちょっと嬉しいくらいです。最後まで、心地よい日々をありがとう。
 今日の帰り道、もう帰り道をこんなふうに歩くことは二度とないんだなぁと、感傷的な気分になりながら歩きました。それでもあまり実感は沸いてこなかったけれど、すれ違う人たちがみんな、とても懐かしい知り合いのように思えて、少し泣きたくなりました。一度も話せなかった人とはいつも、さよならと同時に心の中で友達になれる。
 こうしてこの場所で、前の道を車の走り去る音のする窓際で、背中合わせのパソコンデスクにお互い座って日記を打つのも最後なんだと思うと、時間の許す限り、いつまでも書いていたい気分です。だけど明日は早いし忙しいから、今夜は早く寝なくては。ここで、いろいろと書いたなぁ。次の場所でも、いっぱい書こう。
 ここを去るのは淋しいけれど、新しい家での生活への楽しみも、日に日に膨らんでいます。明日は引っ越しと同時に、新しく住むマンションの隣近所さんに菓子折りを持って挨拶にいくという、緊張の行事も待っています。そのことを考えると、今から気が重くなりますが、大人なので、なんとかがんばろうと思います。こわい人が、どうかいませんように。 
by papiko-gokko | 2010-08-20 23:02 | Diary
乾かないうちに丸めた水彩画きみを含んでにじむ背景
 営業部の所長に、出産を期に退職する意志を伝えました。予定日がわかってすぐ、予定日といつごろまで働くつもりかということは伝えていたのですが、産休後に復帰するのか退職するかどうかについての決断は、安定期に入るまで、少し待ってもらっていたのです。会社の就業規則によると、産休のほか「一年間の育児休暇を認める」という記述もあるものの、現時点でまだ取得した前例がなく、一年後に復帰できる自信もないし、子供が小さいうちはたっぷりべったり過ごしたいという憧れも強いので、退職することにしました。母親からは「辞めちゃったらもう次は、今みたいな会社に勤められないかもよ」と心配されたけれど、子育てだってそのときを過ぎてしまえばもうできないし、子供のころ夢見た未来のなかに、会社で働く自分の姿はなかったけれど、子供を生み育てる姿は、いつもあったのだもの。
 体調がよければ、11月の終わりか12月の初めごろまで勤めて、退職する予定です。退職しますとはっきり伝えたら、もうほんの数カ月で辞めるのだという実感が沸いてくるかと思っていたけれど、伝えたところで、少しもわいてきませんでした。もうすぐ母親になることについても、もうすぐ引っ越して新しい生活が始まることについても、退職することについても、どうして私はこうも、実感するまでに時間がかかるのだろう。これってつまりどういうことなのだろうかと、自分の変化を眺めているうちにどんどん人生が進んで、すっかり過ぎてしまってから、あぁ・・・そういうことだったのか・・・と、ようやく実感している気がします。早とちりの思い込みや思いすごしは得意なのに、それでいて、すべてがいつまでも同じままであるような錯覚を、いつもしていて、ギリギリまでのんきです。

 なんだか、朝焼けと夕焼けを、同時に見ているような気持ち。お腹の中には日々育つ命があって、自分自身の目の前には、大好きな家からの引っ越しや、慣れ親しんだ職場からの退職や、夫との二人暮らしとの長いお別れがあって。出勤の道、暑くて身体がしんどくて、気持ちがゆるんで泣きかける時、それが、悲しみや寂しさの涙なのか、喜びや嬉しさの涙なのか、判断しかねて瞬きします。終わりゆくことへの心もとなさと、始まろうとすることへの心細さは、とても似ていてこんなにも、ひと続きなんだなぁ。朝焼けと夕焼けを同時に見るのは、眩しくて、淡すぎて、大きすぎて、言葉にしきれず立ち竦むけれど、同時に見られることなんて、人生にそう多くはないのだろうから、とにかく、全身つかって見つめていることにします。横ぎるカラスの影一匹、伝い落ちる朝露の光一滴、見逃さないように。
 
by papiko-gokko | 2010-08-17 21:06 | Diary
カーテンが風に膨らむ教室で思い過ごしの鼓動とじゃれる
 朝からすでに、陽炎の見えそうな暑さ。あまりの暑さに意識が朦朧としてきて、よろよろ歩きながら、道の脇に停められていた自転車のハンドルに思い切り手の甲をぶつけてしまい、痣ができました。暑さってこわい。
 容赦なく日の照りつけるアスファルトには、そこここに、蝉の死骸が落ちていました。無残につぶれたのや、まだつつけばジジジと動き出しそうな美しいのや、ひっくり返って白い腹を見せているのや、そのどれもが、安らかさとは程遠い姿でした。蝉の死骸が土に返り、栄養となって来年の蝉や蝉の止まる木を育てるという話を読んだことがあります。アスファルトに落ちてしまった蝉は、浮かばれないだろうな。
 毎日通る坂道沿いのお寺近くでは、朝の出勤時にはミンミンゼミの大合唱、夕方の帰り道には、その合唱に混じって、時折ヒグラシの甲高い声が響きます。今日はこの夏初めて、ツクツクボウシの鳴き声も少しだけ聞こえました。このお寺の前を通るのもあと数日なのかと思うと、目に映るひとつひとつが、途端に貴重に思えて、吹く風の感触だけを深く感じ、まとわりつく暑さが一瞬、遠のきます。
 毎日通った家から駅まで20分のひたすら細い一本道の通勤路。ここを歩きながら、いくつかの決断をして、いくつもの短歌を考えて、いくたびも仕事の苛立ちを沈めながら歩きました。川沿いの桜並木にかかる橋、雨の日だけシャッターのあく傘屋さん、店先の黄色いビールケースと赤い郵便ポストと青い自動販売機との鮮やかなコンストラストにいつも見惚れた酒屋さん、常に盛況している歯医者さん、大人が通るにはちょっと小さな木扉の、緑ペンキで塗りたくられた不思議な喫茶店、屋根も壁も蔓に覆われているけど営業している蕎麦屋さん、ショーウインドウに有名漫画家のサインが飾ってあるお寿司屋さん、すごい煙の焼き鳥屋さん、半紙に筆で書いた子猫の里親募集ポスターがしばらく貼られていた花屋さん、毎朝いい香りのパン屋さん、夜に歩くとエコーの効いたおじさんの歌声が漏れてくる昭和っぽいカラオケパブ、色褪せた背表紙の並ぶ貸本屋さん、サスペンダーに丸いおしりのご主人がハタキかけてる時計屋さん、開店中は店先にでっかいクマのぬいぐるみが置かれる洋食屋さん、果物にあてる照明の加減の調整に余念のない八百屋さん、ピカピカのマンション、常に誰かが「太鼓の達人」を叩いている小さなゲームセンター、昔ながらのタバコ屋さん・・・・・・細い一本道に、所狭しと様々な建物が並んでいて、建物と建物の間の狭い路地から路地へ猫がすまし顔で横切っていき、道行くひとのなかに「あ、猫だ」と反応する誰かがいて、誰もが日常のなかにいて、のどかで、楽しかったなぁ。ありがとう。忘れません。

 引越しの日まで、今日を入れてあと6日間。部屋中いよいよダンボールだらけになり、引越し業者さんからもらったダンボールだけでは足りなくて、昨日夫が職場から、新たに段ボール箱を持って帰ってきました。あと詰めるべきものは食器と靴とお鍋類ぐらいなので、当日までにはなんとかなりそうです。当日まで使っていて段ボール箱に詰められなかったものは、結婚式のときウェルカムボードのサイズに合わせて買ったでっかいキャリーケースに詰め込んで、まるで長い旅行に出るみたいに、最後の玄関を出る予定です。もうあと6日でこの家の住人じゃなくなるのに、家具が普段通りの場所にあるせいか、お別れの実感が沸きません。この家自身も、私たちがじきに出て行くことに、まだピンときていないようです。きっと、当日引越し業者さんがきて、どんどん運び出されていって、からっぽになってはじめてお互いに気づくのだろうな。そして家は急によそよそしく、私は急にさみしくなって、いつまでも続けたかった文章にピリオドを打つような気持ちで、めそめそ鍵を返すのだろうな。借りたものはいつか返さなくちゃいけない。それだけのことなのだけど。
by papiko-gokko | 2010-08-16 22:07 | Diary
生まれてくる前聴いたようなその深い声
 金曜日に、風邪をひきました。今日はほぼ完治して、咳が時たま出るくらいです。昨日は、喉の痛みと頭痛腹痛に苛まれ、みっつ並べた座布団に寝転がって、一日じゅう不機嫌に過ごしていました。どこかが痛いと、不機嫌になります。痛むのはだれのせいでもないのに、身近な人に対して、心が狭くなります。そういうとき、私は自分勝手な人間なのだなと、思い知りり、ますます不機嫌になります。
 今日はもうどこも痛くないので、朝からご機嫌で、歌を歌いながらお皿を段ボール箱に詰めたりなどしました。お腹をぽんぽん叩いてリズムをとりながら歌っていると、お腹の子にも聞こえているような気持ちがして、歌うのがますます楽しくなります。
 胎教には、モーツァルトなどクラシックがいいとか聞くけれど、クラッシックを聴くと私がたちまち眠たくなってしまうので、今のところはB’zやスピッツなど、私の普段から聴いていて口ずさめるような曲ばかり聴いています。なぜか妊娠してからは、Coccoと鬼束ちひろもよく聴くようになりました。重みのある女性の声を聴いていると、安心します。それから今日は、先日読んだ『境界のRINNNE』の面白さをきっかけに高橋留美子熱が高まっているため、ネットで『らんま1/2』や『うる星やつら』のテーマ曲を聴いて、ひとりでどこまでも楽しい気分になっていました。胎児のときに聴いている曲は、将来の趣味に影響を与えるのかな。とりあえずお腹の中にいる間は、お母さんの好きなものの世界に共に浸かっていただいて、うまれてからまた、自分の好みをみがいてね。


 夫の存在ひとつで、すべてが事足りている私の日常。私にとって、それはとても快適で、いいことなのだけど、果たしてそれでいいのだろうかと、交友関係の活発な人の日記を読んでいて、すこし不安になりました。
 今、私の生活に、夫以外に、会わなければリズムの崩れる人はいなくて、なので私は平和です。両親や妹や数少ない友達のことだって、すごく大事で愛しているけれど、しばらく会わなかったからといって、感情をかき乱されたりすることはありません。それは今、夫以外の大事な人みんなが、私のいない町の私のいない家に住み、私と関わらない日々を送っていて、お互いにとって、それが当たり前のことになっているからだと思います。私の大事な人が、私と関わらない日常を何の問題もなく笑って暮らしていることは、私の心をむしろ、安定させます。
 だけど、夫だけは違います。夫が私のいない家に住んで、私と関わらない日常で生活をはじめるのを想像したら、それだけで目が血走ります。夫に対してだけは、私と関わらない日常を送ることを、許せません。それは一体、なぜなのだろう。他の大事な人たちと、一体なにが違うのだろう。彼が今、良くも悪くもこの世で私を最も解放する人だからかな。私が私である必要性を、誰よりも深く感じさせてくれる人だからかな。理由はよくわからないけれど、夫だけは私の日常から離れることを許せず、夫さえいれば日常が、事足りるのです。
by papiko-gokko | 2010-08-15 23:38 | Diary
妊婦検診の日
 一ヶ月ぶりの妊婦検診へ行ってきました。私は有給をつかい、夫はシフトを調整して今日を休みをとり、今回もふたりで受診しました。お盆期間というのもあってか、前回よりも混んでいなくて待ち時間はほとんどなく、検診自体もあっという間に終わりました。今回ははじめて、看護師さんにメジャーでお腹周りのサイズを測られました。あとから母子手帳を確認したら、63センチと記入されていました。しかし、元のサイズがわからないので、どのくらい膨らんだのかイマイチわかりません。妊娠するまえが何センチだったのか、調べておけばよかったなぁ。今のところ見た目では、裸で横向きに鏡の前にたつと、ぬもっと突き出ているのがわかる程度です。まだ服を着ていたら、ほとんどわかりません。
 エコーでは、大きくなったお腹の子が、今日も元気に心臓を「どっどっどっ」と、力強く鳴らしていました。元気いっぱいなその音を聞いて夫と思わず笑ったら、お医者さんも「とっても元気そうですねぇ」と、笑いました。そうして笑いながら巧みな操作で様々な角度からの映像を映し、頭のサイズなどをすばやく測り、最後に「うん、順調ですね」という一番聞きたかった言葉をいただきました。これでほっと一安心です。今回も「こっちを向いているのを、記念撮影しときます」と、正面を向いているエコー写真を一枚くださったので、家に帰ってからも、母子手帳ケースから取り出してはニヤニヤ眺めています。顔だちなんかはまだまだ全然わからなくて、骨が透けているのか宇宙人っぽいのだけれど、そこがまたなんとも言えず可愛いなぁと思いました。すでに親ばかが始まっているのかも。そういえば、まだ性別についてはまだ何も言われませんでした。残念だったような、ちょっとほっとしたような。
 エコーのあとは、診察室に移って問診があり、今のところ特に問題なしということでサラリと終わって、それからそのあと今回は、診察室とはまた別の個室で、助産婦さんとお話するという時間が設けられていました。診察室とはひと味ちがった和やかなムードのなか、医学的なことに限らずなんでも不安なことを聞いてもらえるという時間なのだそうです。今日担当だった助産師さんは、溌剌とした笑顔にきらきらした瞳の若い女性の方で、私も夫もその眩しさに初めはすっかり恐縮してしまいましたが、なんとかいくつかの質問をして、安心を得ることができました。特に夫は私以上に色々と細かい不安を抱えていたらしく、体重のことや私の心臓のことなど、しっかり質問してくれました。感心です。私もこれからは不安なことをしっかり整理して聞けるよう、不安になるたびメモしておこう。
 午前中で病院が終わり、帰りにスーパーへ寄ったら、いつもより随分とお客さんの数が少なくて、なんでだろうと思っていたら、夫が「お盆だから人が減ってるね」とつぶやき、その意味を少し考えてから、そうか、この辺りは、お盆と年末年始に人が減るのか!と、ようやく理解しました。都会育ちの夫にとっては、それが当然の風景なのかもしれないけれど、私はそれに気づくと急に、なんだか取り残されたような、港で旅客船を見送ったあとのような、寂しい気持ちになりました。私は次、いつごろ帰れるだろう。
 午後は家でのんびりしつつ、引っ越し準備もそれなりに進めました。あともう一息です。あれこれ動かし埃が立っているようで、朝から喉が痛みます。熱気しか入ってこなくても、やっぱり換気しなくては。今年は例年以上にクーラーに頼りっぱなしの日々なので、電気代が恐ろしいことになりそうです。

 高橋留美子の最新作『境界のRINNE』を、3巻まで一気に読みました。今日の妊婦検診で待ち時間が長いと予想して、昨日のうちから夫に仕入れてもらっていたのです。実際の待ち時間は思いのほか短くて、1巻の半分ぐらいまでしか読めませんでしたが、おかげで待ち時間をまったく苦痛に感じませんでした。
 そういえば、私が高橋留美子作品に初めて触れたのも、病院の待ち時間だったなぁ。らんま1/2をアニメで先に知って夢中になっていた小学1年生のころ、定期的に行っていた眼科の長い長い待ち時間に、母が売店で買ってきてくれた漫画が、『らんま1/2』でした。それまで私は漫画自体読んだことがなかったので、読み方がわからず、読み終えるまでにすごく時間がかかったのを覚えています。忘れもしない13巻、乱馬が弱くなる巻でした。一緒に受診していた妹も買ってもらっていました。あれは確か10巻、ムース初登場の巻だったのを覚えています。この前そのことを妹に話したら、「覚えすぎ!こわい!」と言われました。どうでもいいことばかり覚えています。
 家に帰ってから、1巻の後半と2,3巻を読み、しみじみと、るーみっくわーるどってやっぱいいな・・・と思いました。日常と非日常の混ざり具合が素敵。飄々としたギャグが素敵。カッコいいのにどこか抜けているキャラクターが素敵。そしてなんといっても、ほのかな恋心が素敵。子供のころから親しんでいるから安心して読めるし、輪廻とか霊感とかの書き方も魅力的だし、すっかり虜になりました。『犬夜叉』は戦闘場面やシリアスな場面が多くて途中で読まなくなってしまったけれど、今度の漫画は、それほど本格的な悪との戦いでもなさそうだし、これからも追いかけていくことにします。
by papiko-gokko | 2010-08-12 23:29 | Diary
ひとりでも歩ける君のまっすぐな背中に微かな追い風よ吹け
 昨日から実家に帰省している下の妹と、電話で少しだけ長話をしました。実家へは今、中国から母も帰ってきているので、ひさびさに賑やかな声の溢れる実家になっていることでしょう。電話中も、誰かがドライヤをはじめた音やら、「ファブリーズどこにあるぅ」という声やらが、聞こえてきました。今晩や焼き肉をして、部屋中が焼き肉のにおいになっているようです。
 下の妹は今大学3年生で、そろそろ今後の人生について、いろいろと考えだす時期のようです。去年まで彼女の話には「サークル」とか「コンパ」とか「バイト」といった、快活な若者らしい単語が踊っていたのに、今日彼女の口からは、「インターンシップ」とか「研究発表」とか「卒業した先輩」とか、なんだか息苦しくも凛々しい単語が幾つも飛び出しました。あぁ、一昨日の夜、4歳ぐらいだったころの妹を浅いプールでパシャパシャ泳がせている夢をみたばかりというのに、そんな彼女が、「インターンシップ」とは。
 思い返せば私も、そろそろ将来考えなくちゃなぁと真剣に思い始めたのは、3年生の夏ごろからだったかもしれません。夢と憧れだけで大学まで来たので、現実的な社会のなかで働く自分がまったく想像できず、かといって実家に帰る気もなく、一体これからどんなことして東京にいようかと、もたもた考えあぐねていました。職種も業種も定まらぬまま、いくつかの説明会に参加してみたり、しばらく何もしなかったりしているうちに、あっというまに4年生の夏も過ぎ去り、4年生の12月半ば、年内ぎりぎり滑り込みセーフで今の会社から内定通知が届いときには、どれだけほっとしたことか。震える手で携帯を握りしめ、母と夫(当時はまだ恋人)に報告したのを、今でもよく覚えています。
 動物が大好きな妹は農学部にいっていて、私が聞いてもさっぱり理解できないような、動植物に関する難解で専門的なことを学んでいます。研究で遠くまで足を運んだり、英語の文献を読みといたり、環境問題について論じたレポートを提出したり、聞けば聞くほど、よくそんなことをがんばれるなぁと、感心するばかりです。将来は動物に関わる仕事がしたいと言っていたのを、これまで何度か聞いたことがあるけれど、今現在は具体的にどんな世界を目指しているのか、そのあたりのことははっきりと聞いたことがないので、わかりません。とにかく、納得のいく職場に出会えたらいいなと思います。がんばりたがりの妹だから、どんな職種であれ、力いっぱいがんばりたくなる仕事内容を見つけられたら、それが何より彼女の日々を、活き活き楽しくするでしょう。
 今年で21歳になる彼女の口からは、「同棲」とか「結婚」なんていう、ちょっと気の早い言葉も顔をのぞかせました。「同棲と新婚ってどうちがうんだ」と聞いてきたので、「同棲も気楽で楽しかったけど、結婚すると、すごく気持ちが安定したよ。暮らし自体はそんなに変わらんかったけど、気持ち的にはやっぱりかなり違ったよ。どっちも体験するのをお勧めするわ」と、なんとか姉らしく、自分の経験を生かして答えました。すると妹は「別に同棲したいってわけじゃないけど、なんとなくね」と、クールに言いました。もしかしたら、もう彼女の周りには、同棲カップルもいるのかもしれません。あぁ、おでこの産毛が赤ちゃんのころのままなのに、その妹が、同棲について考えるだなんて。将来のあらゆることについて、幸せな選択をして欲しいです。彼女のもとにいつでもさりげなく、心強い追い風が吹きますように。

 明日は一ヶ月ぶりの検診です。これまでは2週間置きだったので、この一ヶ月はとても長く感じました。早い人は、16週目ぐらいで性別がわかったりするそうで、今からちょっとどきどきしています。今回のエコーでは、どんな姿を見せてくれるのだろう。どうかどうか、元気に育ってくれていますように。
by papiko-gokko | 2010-08-12 00:01 | Diary


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