日記と短歌
by papiko
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今日限り私を終えると知っていたようにまっすぐ落ちる髪の毛
 髪を切りました。鎖骨より長かったのを10センチ以上も切って、さっぱりボブになりました。形状記憶ストレートもあてたので結構時間がかかり、ずっと雑誌を読んでいました。普段全然雑誌を読まないので、美容院ではいつも、どんな雑誌を手渡してもらえるのかを楽しみにしています。
 今日手渡された数冊の雑誌にはどれも、ファッションやインテリアやレシピや体操など、日々を素敵にするためのさまざまな提案が展開されており、試してみたいなぁと思ったり、これはちょっとありえないわぁと思ったりしました。写真だけのページは、何を思えばいいのか分からないことも多くて、なるべく文字のたくさん書いてあるページばかりを選んで読みました。貸してもらったどの雑誌にも、星占いが乗っていなかったのは、残念です。私は中学生のころから雑誌を手に取ったらまず最初に星占いのページを探すのですが、私ぐらいの年齢が読むような雑誌にはもう一般的に、星占いなんて載っていないのでしょうか。いくつになっても私は、自分と好きな人の運勢が気になります。
 今回担当だった方は、私がしゃべるのを苦手なのを瞬時に察知してくださったみたいで、必要なこと以外は話しかけずに、淡々と私の髪の毛をよくすることに専念してくれました。他のお客さんたちは、みんなおしゃべりを楽しんでいて、広くない美容院内は、会話と笑い声で満ちていました。
 隣に座っていた女子大生の子は大変な話し上手で、質問と感想と自分のエピソードとを素晴らしいバランスで挟みながら、興味をもって美容師さんの話に耳を傾け盛り上がるということが完璧にできていて、そのコミュニケーション能力の高さに、ひそかに感心しました。知らない人の話に興味をもつって、難しいのにすごいなぁ。それから、斜め後ろのほうにいたおばあさんの声も、よく聞こえてきました。おばあさんはずっと孫の話をしていて、「だんだん大きくなってくると顔を合わせる機会も少なくなってね、くふふふふふ」「毎日キーボードを背負って出ていくのよう、くふふふふふ」と、ひとつ話すごとに可笑しくて仕方ないといった感じで笑い、そのくふふふふにつられて、美容師さんも「ですよねくふふふふ」と笑っていました。私もくふふふふ笑いたくなりながら、雑誌をめくり続けました。
 混んでいたにも関わらず最後まで一人の担当さんが丁寧にしてくれて、とても雰囲気のいい美容院だったので、また次回もいこうと思います。

 そういえば昨日は、私が夫の髪の毛を切りました。テレビで放送していた映画『ハッピーフライト』を見ながら切っていたので、途中、指を思い切りハサミで挟んで切ってしまったり、前髪をそろえ過ぎたりしてしまいましたが、なんとか仕上がりました。ちょっと前髪を丸く短くしすぎたせいか、メガネをかけると変態教師っぽくなってしまいます。でも前髪が長すぎると今度は変態学生っぽくなるので、彼を変態っぽくしない前髪をつくるのは、かなり難しいのです。
 『ハッピーフライト』、すごく面白かったです。綾瀬はるかさん、綺麗で可愛い! 胸も大きいし声も女の子らしくて、こんな隅々まで美しい人は、見ているだけで幸せな気持ちになれます。『おっぱいバレー』が見たくなりました。

 NHK大河ドラマ『龍馬伝』、毎週見ています。回を追うごとに、福山雅治さんの演じる龍馬が好きになっていき、今ではすっかり、本物の龍馬は福山雅治そっくりだったに違いないと、思いこみつつあります。それから、香川照之さんも、すごくいい! あの人がでてくると、一気に面白くなって、物語に引き込まれていきます。悔しそうな顔、嬉しそうな顔、呆気にとられた顔、あの人がぐっとくる表情を浮かべるたび、テレビを見ている自分まで、無意識のうちにその顔を真似していたりします。
 今回あたりから、黒船がでてきたりして、幕末っぽくなってきました。篤姫が、どういうことじゃと眉をひそめていたそのころに、龍馬もまた、悩んでいたのだなぁ。黒船を見て驚く龍馬の姿に、驚きました。当時の人たちにとって黒船は、UFOのようなものだったのかな。来週以降も、見逃さないようにしなくては。
by papiko-gokko | 2010-01-31 23:59 | Diary
今なにを言っても過剰になりそうで口いっぱいに頬張るみかん
 時の流れも感情も、静かな夜です。苔むした、魚のいない水槽のような、静まり返った心です。
 今日は珍しく朝まで夫がいないので、いつもよりも長い時間、お風呂に浸かりました。裸でお湯に身を任せているせいか、湯船の中では、自分に対して投げる視線が、少し異質な気がします。服を着ているときの自分が為したあれこれを、前世の出来事のように、遠い目で嘘っぽく思い返して遊び、なにやってんだか・・・と、冗談めかして呆れます。
 あぁ、もしかしたら、服を着ている私が会社で働いたり家でご飯を食べたりしているあいだも、裸の私は常に湯船のなかにいて、無抵抗な格好でくつろぎながら、服を着ている私のことを冷やかに見つめているんじゃないかな・・・と、だんだんのぼせてくる頭でそんな気持ち悪いことを思ってみたらぞっとして、それで慌てて湯船を出ました。危うく幽体離脱するとこだったかもしれません。
 お風呂からでて、鏡を見ていたら、今すぐにでも美容院へいきたくなりました。肩までだったはずの髪の毛はいつのまにやら鎖骨よりも長くのびていて、重たい感じになってしまいました。短すぎる髪も長すぎる髪も、ずぼらな私には扱いが難しすぎます。日曜日にでも美容院へいって、また肩より短いぐらい(ミディアムロングというのかな)に切ってもらうことに決めました。ストレートもあてたいなぁ。日記を書き終えたら、ネットでヘアカタログを見ることにします。スタイリング不要という言葉をいれて検索しよう。
 パジャマを着て、愛するオリーブ化粧水とクリームを顔にべたべた塗って、サプリメントと漢方と豆乳を飲み、それから、たべっこどうぶつを食べました。ほぼひと月ごとに増えていく、漢方やサプリ、いいんだか、悪いんだか。子供のころから錠剤を飲むのが苦手で、いまだに錠剤を手のひらにのせると憂鬱な気持ちになるので、錠剤を飲むときには、そのすぐあとに何かしら口直しのお菓子を食べることにしています。お菓子を食べないと、いつまでも喉の奥に錠剤がある気がしてしまうし、飲んだあとにはお菓子があるのだと思うと、くっとがんばって飲めます。
 たべっこどうぶつを食べながら、宇多田ヒカルを聴いていたら、むしゃくしゃするほど切なくなりました。そんな静かな夜でした。
by papiko-gokko | 2010-01-30 00:33 | Diary
出勤の服が決まらずあの人に好かれてみたい自分に気づく
 今日も歯医者へいって、昨日親知らずを抜歯した部分を消毒してもらいました。とても順調に治っているようです。麻酔が切れてからもまったく痛むことなく、ちょっと違和感があるぐらいで腫れもなくて、食事もほぼ普通できています。前回は長時間かかった上に縫ったりもしたせいか、3日ぐらい身体がぐったりしていて、口がうまく開かずお粥やゼリーしか食べられなかったのに、上と下ではこんなにも違うものなのかと、驚いています。今回一度も痛み止めを飲まなかったと先生にいったら、「前回もあんなに大変だったのに痛みが出なかったし、ぱぴこさんは痛みに強いのかもしれませんねえ」と、朗らかに笑われました。これまで自分では痛みに弱いほうだと思って生きていたので、意外です。抜歯は恐いけれど、がんばってよかったです。残るはあと2本、またそのうち、がんばろう。
 恐いなぁと思っていたことを、思い切って経験し終えると、脱皮でもしたかのように急激に視界がすっきりとひらけて、人生がひとつ味わい深くなったような気持ちになれるのだなぁ。バンジージャンプや綱渡りに敢えて挑戦する人たちの気持ちが、少しわかった気がしました。

 それから、今日はもうひとつ嬉しいことがありました。先日失くしてもう見つからないだろうと悲しく諦めていた定期入れが、見つかったのです。重ねてあった座布団の間からコテンところがりでてきて、幻かと思いました。「あった!」と手に持っていた座布団を投げ捨てて定期に飛びつくと、それは毎日触り慣れている、藍色の少し色あせた、私の定期入れでした。そして中にはもちろん、定期券や昔見に行った妹の吹奏楽会の半券や父の古い名刺が、そのまま入っていました。もう二度とこうして手にとることはできないと思っていただけにすごく嬉しくて、かくれんぼで一番上手に隠れた子をやっと見つけて目があった時みたいに、表情筋より先に呼吸が笑いだし、ひぉうぅとひとりで変な声を洩らしながら、撫でまわして生地の感触を確かめ、藍色に散りばめられている白い花の模様を吸い込むように見つめました。定期入れのことを、こんなに愛しく感じたことはありません。もうぜったい、失くさないぞ。定期入れの端に小さな穴をあけて紐を通して、首にかけようかなぁ。でも、毎日IPodも首にかけているから、そんなに首にかけすぎても、それはそれで不便かな。

 明日は末締めの日。間違えないようがんばろう。そして週末には、美容院へいきたいなぁ。
by papiko-gokko | 2010-01-29 00:53 | Diary
眠気だけ確かな夜は目も耳も閉ざして君の卵になろう
 向かいの庭の梅の木が、花をつけていました。春の気配を想う日が、少しずつ増えてきたような気がします。風は冷たかったけれど陽射しはほのかに暖かくて、身を縮めずに歩きました。

 いろいろ思い通りにいかんわぁとぼやく私を、「そりゃそんなもんでしょうよ」と夫がたしなめ、じゃあそういうときどうするのと尋ねたら、「自分でどうにかできることと、どうにもならないこととを見極めて、どっかで見切りをつける」と、こともなげに答えたので、思わず感心してしまいました。すると夫は、「ええなんで?感心する意味がわからない」と、私の反応に驚いていました。だって私は、その見極めがつかないから、途方にくれてばかりいるのです。どんなこどでも自分の努力と執着次第でどうにかなるように思えて無駄にもがいて疲れたり、なにもかもが自分の力ではどうにもならないように思えて無気力になったり。見たい景色の当事者になるのは、いつだって、難しいなぁ。

 よく似た平和な日々が続いて、たいらなスクリーンに閉じ込められてしまいそうな淡い恐怖と眠気を感じながら、ふわふわ過ごしています。いつまでもこの部屋にいて、夫とばかり話していたくて、そんなの視野が狭まるばかりでよくないなぁと思うのだけど、なまぬるい卵の膜のなかにいるような安心をやぶってまで、心が刺激を求めたがらないのです。この平穏の膜をやぶっていいのは、私と夫のつくりだすものだけなんだ。
 そんなふうに閉ざして過ごしているから、私にとって外の世界は、今、ほとんど会社だけです。そしてその会社のなかで、担当の営業さんだけが、私にとって唯一本物の光です。あぁこの人に好かれたいなぁ・・・この人をいつまでも好いていたいなぁ・・・と思わずにいられない人というのは、つまり自分の世界にとって、本物の光なのだと思います。だから、外の世界で私に影をつくることができるのも、本物の光である担当の営業さんだけです。他の人の言動で、私はどこも翳りません。歪みまくりはするけれど、翳りません。

 先週一週間、私が料理をつくる当番だったのに、やる気がでなくて手抜き料理を連発してしまい、昨日夫にこっぴどく叱られました。どうも私は、食に対する情熱が低くて、それでいつも夫を怒らせています。彼は食事をこよなく愛する人なので、美味しくない料理を出すと、愛を疑われてしまいます。今日は反省のしるしにケーキを焼きました。愛を疑われないためにも、美味しいものを食べさせられるよう、日々真面目に料理と向き合おう。そのためにはまず、自分が美味しいものを食べたいと思うようにならなくては。空腹が満たされて栄養が取れればそれでいいという考えを、捨てなければ。

 今日はなんだか、抽象的な日記になってしまいました。具体的なことを繰り返す日々は、振り返りすぎると、こんなにも抽象的。うん、こんな日もあるということで。
by papiko-gokko | 2010-01-25 22:42 | Diary
青空をカーテン越しに持て余す休日真昼のバスでいこうよ
 夫と図書館へいきました。いつもの近い図書館じゃなく、今回は路線バスにのって、隣町にある区で一番大きな図書館まで足をのばしました。吹き抜けの二階建てで螺旋階段があり、二階全部が児童書という、なんともぜいたくな図書館です。青空の下をゆるゆる走る真昼のバス内は暖かく、夫との会話が途切れるたびに、うとうとしていました。
 バスを降りると、図書館のそばの広場では、冷たい風の吹くなかで子連れの若い家族が何組も遊んでいて、子供たちの高らかな笑い声が寒空に響き渡り、その絵に書いたような平和な光景が、なんだか誰かの見ている遠い日の幻のような気がして、くらっとしました。平和も争いも、そのどちらもが、あるところには当然のようにあるんだな。
 図書館内へ入ったら、そこから夫とは別行動です。この図書館は文学全集も充実していて、テンションが跳ね上がりました。滞在時間約60分、私がほとんどひとつの棚の前でしゃがんだり背伸びしたりを繰り返しているあいだに、夫は棚から棚へと忙しくて移動して、あっという間に10冊の本を抱え込んでいました。科学の本、俳句の本、文化の本、宗教の本、性の本、エッセイ、それらすべてが、小説執筆の資料なのだそうです。私は、日本短編文学全集という全集のなかから気になる作家さんの入っているものを3冊と、文庫を3冊、短歌に関する本を2冊借りました。文学全集のいいところは、一冊まるごとひとりの作家というものばかりでなく、種類によっては、一冊で一気に2、3人の有名作家の作品を楽しめるところです。選ぶのが下手な私には、だから全集が向いている気がします。
 借りた本を各自持ってきたカバンに入れると、私も夫もずんと荷物が重たくなり、とても図書館以外の場所にいける状態ではなかったので、バスの時間を確認して、時間がくるまでお昼ご飯を食べ、またバスに乗って帰りました。帰りのバスからは、はじまったばかりの明るい夕焼け空が見えました。明日は読書の日にしよう。

 人間ごっこに、短歌971~980を、アップしました。今回もすべて日記の題名に詠んだ歌から選んだものです。
by papiko-gokko | 2010-01-24 01:11 | Diary
欲しいのはきわどい秘密もっともっと僕の事情に深入りしてよ
 ようやく週末。今週は、感情が抜けかけの乳歯みたいにぐらぐらしっぱなしで、ぐったり疲れてしまいました。
 水曜日まで沈みがちだった反動からか、昨日は妙に浮つきハイになっていて、いかなきゃなぁ・・・と思っていた歯医者に勢い込んで予約を入れたり、次はいついこうかなぁ・・・と迷っていたひとりカラオケを決行したり、飲み始めてみようかなぁ・・・と考えていた体質改善の漢方をドラッグストアで思い切って買ったり、そろそろ少なくなってきたなぁ・・・と思っていた化粧水をネットでまとめ買いしたり、やるべきことやりたいことを見つけては、しゃかりきに動きました。そして今日は、色々なことをうっすら想い、うっすら考え、何も十分に噛みしめないまま、うっすら過ぎてゆきました。
 ひとつの願い事が、私のなかで熟れて熟れすぎて雫を垂らし、その雫で今立っている地点がだんだんぬかるんできて、願えば願うほど、歩きにくくなっていく一方のような、なんだかそんな感じの一週間だったなぁ。来週はもっと、こざっぱりとした気分を心がけて生きよう。

 愛すべき土日に向けて元気を蓄えるべく、今日は帰ってからずっと、B’zのDVDを見ていました。稲葉さんが、とにかくどうしようもなく、かっこよすぎて、目が離せなくて、大変です。稲葉さんは、なぜこんなにも最高なんだろう!かっこよくて知的でセクシーで鋭くて包容力があって熱くてクールで可憐で可愛くて、いつも欲しい言葉をくれて、なにからなにまで、魅力的すぎて、どうしよう! 稲葉さん、あぁ、こんな、口にするだけで幸せになれる名前、他に知らない、稲葉さん。
by papiko-gokko | 2010-01-23 00:23 | Diary
まだ君の温度が残るマフラーに顔をうずめるつかのまの春
 健康診断がありました。去年の反省を生かして、今日は病院までゆっくり歩いていったのに、「やっぱりちょっと、脈が速いかな」と言われてしまい、聴診器でも音をきかれて、「心臓の手術をしている人は、完治しても、頻拍の症状だけ残ることがよくあるんですよ」と説明されました。心房中隔欠損症という先天性の病気を手術で治したのは4歳のときで、その後は心臓のことで病院にかかったこともなく、手術の跡も、小さいころからずっと見てきたので、傷跡とというより、おへそと同じように元々体についているものという感覚でしかなくて気にならず、普段はまったく手術のことなど忘れています。ただ、こうして健康診断などで病歴に触れられた時だけは、自分の心臓にはちょっとした歴史があるのだなぁと、かすかに残る入院の記憶に想いを馳せます。治してもらった大事な大事な私の心臓、どうか慌てず末永く、動き続けておくれ。

 定期券、やっぱり見つかりませんでした。交番でも駅でも調べてもらいましたが届いておらず、誰も何も同情なんてしていないのに、別にもう覚悟してましたから大丈夫ですからという風を装いつつ、交番で書類を書き、駅で定期の再発行をして、家路につきました。悲しいです。いつか出てきますように。毎日歩く見慣れた町並みも、そのどこかにひとつ物を落としたとたん、途方もなく広い世界に変わります。そうか、だから世界が狭く感じた時は、どこかに点を打てばいいのか。これからは失くさないように、カバンにくくりつけられるタイプの入れ物を買うことにします。
by papiko-gokko | 2010-01-21 01:12 | Diary
今日思ったこと
 春の気配の端っこを、駅のホームで捕らえました。日が短くなりはじめてから、勤務を終えて会社を出たころにはいつもすっかり夜空だったのに、今日はその夜空とゴタゴタ続く建物との境目に、薄ぼんやりと夕焼けが、まだ残っていたのです。それは絵具筆をすすぐバケツの濁った水に、朱色のついた筆を突っ込んでどんより混ざり合ったときのような、あまり綺麗とはいえないくすんだ色だったけれど、確かにあれは、わずかに残った夕焼けの裾に、違いありませんでした。ゆっくりゆっくり、日が長くなってきているのだなぁ。会社帰りに夕焼けをみたのなんて本当に久しぶりのことで、その感覚が懐かしくて、電車がくるまでずっと夕焼けのほうを眺めていました。真冬の夕焼けは、目を離したすきにシルクのように滑り落ちていくから、がんばって目をそらさずにいました。
 電車がついて乗り込んで、改札をでて再び空を見た時には、いつも通りもう隅々まで暗くなっていて、頬に触れる風は相変わらず冷たくて、あぁ、本当に春がくるのはまだまだ、まだまだ先なのだと、思い知らされました。春がくるまでには、まだまだ寒い日が続いて、何度か冷たい雨が降って、いつまでも冬が続くように思えてきては辛くなるのだろうな。本当に春が来る日まで、こうして、ひとつひとつ、思わせぶりな春の気配を、見つけては嬉しくなって、寒さでまた冬を思い知って、繰り返しながら、待ってよう。春が好きです。花粉で肌が荒れるけれど、それでも春が好きです。

 自分に出来ない事をさらりとやってのける人や、自分が欲しくてたまらないものをすんなり手に入れる人のことが、羨ましくて羨ましくて、羨ましさが自分のなかで強まれば強まるほど、その想いが今にも妬ましさへと変異していきそうで、ひとたびそうなってしまったら、妬ましさにあらゆる感情を飲み込まれてしまいそうで、そんなのいやだと慌てて音楽の音量を上げて意識を散らし、泣いてみようととうつむいてみました。だけど、勢いよく出てきたのは、険しいため息ばかりでした。「溜め息をつくと妖精さんがひとり死んじゃうんだよ」というメルヘンな言葉が心のなかに広がって、間もなくまた心のなかで、「んなこたーない」とタモリさんがその説を否定してくれました。タモリさんありがとう。テレビのなかにいつもいつも、淡々と存在していてくれてありがとう。今を生きよう。過去に敷いた布団で眠って、未来から鳴る目覚ましアラームで起きて、今日も明日も今を今を。

 地元の友達から寒中見舞いが届きました。昨年2人目の子が誕生して、家族4人で仲良く写っている写真のハガキでした。第一子誕生のときは、ついにお母さんかぁという新鮮な実感があったのですが、2人子供がいる写真はもう、あまりにもお母さんすぎて、この子がかつて一緒に中学校へ通った友達だなんて、冗談みたいな気がしてきます。家族4人が写ったこの写真ハガキが、母親や父親あてに届いたのではなく、自分の同級生が自分宛てに送って来たものなのだということが、不思議で信じられません。
 友達はとても華奢なのに、2番目の子をぎゅっと抱っこしている彼女の手は大きくて、しっかりとしたお母さんの手をしていました。その子に限らず、子供を産んだ知り合いを見ていて、一番かわったなぁと感じる体の部位は、腕と手です。日々子供を抱いて筋肉がつくというのもあるだろうし、子供を守るために全力であらゆることをこなすその手は、それまでの手とは違う血管の浮き方、筋の通り方をしている気がします。オムツを替えたりよだれを吹いたり忙しく動くその手からはたどたどしさが消えて、頼られる手になっています。すごいなぁ、お母さんって、すごいなぁ。

 明日は健康診断。どこもかしこも健康でありますように。去年は病院へ猛ダッシュで駆けつけてしまい、その結果心臓がものすごくバクバクした状態で血圧や心電図を測ったりしたので、高血圧と頻拍症とでてしまいました。今年は余裕をもって、ゆっくり向かおう。採血が楽しみです。注射なんて大嫌いですが、大嫌いなことをされるのが一瞬だけで終わる場合に限っては、大嫌いだ!と思うその瞬間が、逆にちょっと、楽しいような気もして、わくわくしてしまいます。

 と、今日ここまで書いたようなことを考え考え歩いていたら、帰り道のどこかで、電車の定期を失くしてしまいました。パスモで、少し電子マネーも入れていたのに、これは今年に入って一番の、無念極まりない出来事です。まったく、これで一体何度めだろう。今までは誰かいい人が拾ってくれていて見つかっていましたが、今回ばかりは、暗い道で落としたし、望みが薄いかもしれません。明日、交番にいってみます。ありますように。あの定期入れは友達がくれたものだし、なかには、父の古い名刺と、下の妹が高校のときに観に行った吹奏楽の演奏会の半券が、なんとなくお守り変わりに入れてあったので、見つからないと、悔しいだけじゃなく、悲しいです。誰か、拾ってくれていますように。
by papiko-gokko | 2010-01-19 22:50 | Diary
転べない振り返れない止まれない帰る場所なら知っているけど
 一昨日あたりから口角炎ができてしまい、放っておけば治るだろうと思っていたら日に日にひどくなり痛みも増したので、ドラッグストアへいって、塗り薬を買いました。
 どんな薬を買えばいいのか適切なものを自分で選ぶ自信がなくて、ドラッグストアについてすぐ、白衣姿の優しそうな薬剤師さんに、「口角炎の塗り薬は、ありますか」と尋ねました。すると薬剤師さんは、「はい、ありますよ」と爽やかな笑顔で答えて素早くその身をひるがえし、様々な薬のずらりと並ぶ棚から、すっと口角炎の薬を差し出してくれて、「僕もよくなるんでね、これをつかうんですけど、よく効くんですよ」と、にこやかに話してくれました。困っているときに薬剤師さんがすっと出してくれる薬の箱はいつも、救いの鍵が入った宝箱のように見えます。だからこのすっと差し出される瞬間が、私はなんだか好きです。
 差し出された宝箱を前に迷う理由もなく、それではそれをお願いしますと財布からお金を出していたら、薬剤師さんはレジを打ちながら、「口角炎や口内炎は、疲れや栄養のバランスの乱れが原因のことが多いですから、ビタミン剤も一緒に飲まれると、治りが早いですよ」と説明してくださって、自分もよく飲むというビタミン剤の試供品を3袋も、袋に入れてくれたのでした。なんという慈愛に満ちた、すこやかサービス・・・!
 口角炎が風に当たると痛いためマスクをしていた私は、そのとき自分の顔がほころんだのを伝えられない代わりに、ありがとうございますと、何度も言いました。ちょっと、言いすぎた気がしますが、何度言っても足りないぐらい、嬉しかったのでした。病院へ行くほど重症ではないけれど、よく効く薬を教えてもらいたい程度には具合が悪いとき、すみやかによく効く薬を差し出してくれる薬剤師さんは、いつも少し弱った心に、ちょうどいい親切と安心をくれます。私の不安を溶かしてくれて、ありがとう。妹がドラッグストアで働いているので、是非とも、あんな優しい薬剤師さんをゲットしてほしいです。

 塗り薬とビタミン剤を手に入れて気持ちが元気になったので、ドラッグストアの近くにある本屋さんへ立ち寄って、資格の本の並ぶ棚の前に立ちました。昨日、コタツでぼんやりだらだら過ごしていたら、なんだか自分の将来が、急にもやもや不安になってきて、静かに錯乱してきて、長いことぼーっと考えに耽っているうちに、そうだ資格とろう、という結論に達したのです。社会に対する自分の能力に、私はまったく自信がないので、これから先、今の会社を辞める日がきて、やがて再就職となったとき、こんな不景気の世の中で、コネも資格もない私を雇ってくれるような場所なんてなかなかないだろうから、身につけられるものは身につけておかなければと、いきなり焦りだしました。
 大学4年生のとき、就職活動で資格欄に書くことが何もないことに危機感を覚え、何か事務に使えそうな資格はないかと探して、MOSというワードとエクセルの資格を取りました。あのとき取った資格が今の会社に入るのに役立ったのかどうかはよくわかりませんが、履歴書を書く時の心もとなさが随分軽減されたのは確かです。今度もできれば事務職で働きたいので、資格を取るとしたら、簿記の資格がいいのかなぁと思っています。それからもうひとつ、秘書検定というのも気になります。営業事務をやっていて私が楽しさを感じるのは、請求書の発行やら帳簿の記入などよりも、書類作成やファイリングなどといった秘書的な仕事のほうで、できれば次に仕事を探すときも、お金より人とのやり取りが中心の仕事を選びたいと考えていて、それならば秘書検定も持っているとよいのかなぁと思います。
 そんなふうにいろいろ考えを巡らしながら資格に関するサイトを眺めているうちに、希望がわいてきて、そして、同じぐらい、嫌になりました。果たしてこれが、私の望む生き方なのかと、わけがわからなくなってきて、夢だけ追いかけていられる人たちのことが浮かんできて、そういう勇気と時間と環境のあることが、憎たらしくて悔しくて仕方なくなりました。
 そんな気持ちを抱えたまま、とにかく資格の本をちょっと見てみようと本屋さんへ寄ったのですが、簿記の資格本が棚の一番上にあり、手が届かなかったため、それでなんとなくほっとして、結局なにも見ないで帰りました。そしてそのまたすぐそばのスーパーで、安く売っていたイチゴをひとパック買いました。そのまま食べるのももちろんいいし、お菓子作りににも使えそうです。

 買いものから帰ってきてからは、さっそく薬剤師さんのくれた飲み薬を飲んで、塗り薬も塗って、部屋の空気を入れ替えて掃除機かけて、それから、今日をいい休日だったと自分に印象付けるために、パウンドケーキを焼きました。とても香ばしく美味しく焼けて、先ほど3切れも食べてしまいました。うん、いい休日でした。
 
by papiko-gokko | 2010-01-17 22:41 | Diary
去る人の背中は強く正しくて手を振る場所で石になりたい
 久石譲のジブリサントラを聴いていたら、幼いのころ好きだった物や信じていた事や、それらに対し抱いていた想いがあふれ出してきて、やたらと泣けてきてしまい、困りました。
 悲しいことなんてそんなになかったはずなのに、まだ10歳にも満たないような幼いころのことを思い出すと、なんだか悲しくなってくるのは、どうしてだろう。強い風の吹く夕焼け空の下を、帰り道を知っているのに、反対に歩いているような。あぁ、これは悲しさではなく、寂しさなのかな、切なさなのかな。
 楽しさも、不安や恐れも、悲しみも、あのころ私の感情はまだ少し、母のお腹に繋がっていて、どんなことでも母に話せば、解決すると思っていました。実際に母はいつもなにかしら納得のいく言葉をくれて、だから私は安心して遊びまわり、どんな感情も思い切り味わい、解き放つことができました。
 今、大人になった私の感情の少しは、過去の私に繋がっていて、だけど、過去の私は何も答えてはくれないから、寂しく、切なくなるのかもしれません。過去の私はいつもいつも、そのときの自分のことに夢中で、未来の私に答えをくれません。今の私はいつもいつも、困っては立ち止まり、振り返ってばかりいるのに。

 両親が初夏のころから中国で暮らすことについて、何度か親や妹と電話で話し、少しずつ、それぞれがどういう方向でやっていくのか見えてきて、あれこれ気になっていたこともなんとかなりそうで、安心しました。誰もが妹たちと祖父のことを心配するなかで、父だけは私のことを一番心配していたと、母から聞いて、じんとしました。私があれこれ考え過ぎるのではないかと、心配しているようです。私は心配ごとに振り回されはするけれど、心配ごとにつぶされたりなんてことは、ないのにな。
 父はいつも、私が一番上の姉だからといって大人になりすぎないようにそれとなく計らい、子供でいられるようにしてくれました。それなのに、お父さんの大好きな島根をとっとと離れちゃって、遠いところで結婚しちゃってごめんよ。去年父が東京へきたとき、池袋の喫茶店で下の妹の将来について話をしていて、「あのこは、地元でがんばるタイプじゃない?」と言ったら、「俺は、おまえもそのタイプだと思っとったんだがなぁ・・・」と、父は独り言のように小さくつぶやいて人の行き交う窓の外に目を映し、そのときは私もつられて窓の外に目を映したきり、何も言えませんでした。ごめん、なんかごめん。一体どんな道を選べば、娘は父に寂しい想いをさせずにいられるのかな。不可能か。愛しているからこそ、いろんな場面が、寂しいのだから、寂しいのはなにも、悪いこととは限らないはずで。

 あぁ、駄目だ、今日はなんだか文章がまとまらない上に、書くことがどうも悲観的になってしまいます。みんな楽しく生きていける力を持っているから、大丈夫。私も大丈夫。明日はのんびり暮らそう。
 
by papiko-gokko | 2010-01-16 00:29 | Diary


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