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日記と短歌


by papiko

あなたのために蝶になって


 明日は休みの金曜日、まっすぐ帰らず少し足を延ばして、池袋へ。東口を出ると、クリスマスのイルミネーションが施されていた。この大きなツリーで年の瀬を感じるのも、今年でもう七回目だ。池袋駅東口のツリーを見るたび、大学一年生の冬を思い出す。初めて池袋でツリーを見て、そのきらめきに感動し、感動した分だけ寂しくなって、なるべく誰にも気づかれないように(そもそも誰も見ていやしないのに)素早く携帯で写真を撮り、そのちょっとぶれた写真を、母や妹に送った。
 ひとりで圧倒的なものを見るのは苦手だ。自分のなかで芽生えた感動を味わうよりさきに、それを伝えたい人たちのことを思い出して居ても立ってもいられなくなるから。一度だけしたことのある一人旅も、もうすることはないだろうなぁ。大勢の友達グループとの旅行も、それはそれで考えただけで胃が痛くなるのだけど。

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 身の丈にあった行為や言葉を身につけ使いこなすのは、難しいことだなぁと思う。身の丈を把握できていない私は、気分次第で怠けたり背伸びしたり、甘えたりかっこつけたり、なんとも、ちぐはぐでしどろもどろな日常。自然体でスマートな暮らしからは、程遠い。
 自分の身の丈にあった言動を身につけるためには、まず身の程を知らねばならなくて、そのためにはいろいろと身の程知らずの経験をして、いくつもの恥をかき、自分よりすごい人を素直にすごいと認めなくちゃいけない。だけどなるべくは恥をかかずに過ごしたいし、素直にすごいと認めるのは癪なことも多いし、何より身の程知らずの経験はくたびれるから、中途半端な甘えと背伸びで、いつまでも微妙に身の丈に合わない行動や発言をして、そこから感じる気持ちのズレに、人知れずつまづく。

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 仕事中は、もっぱらスピッツ小説について考えている。書ける書けないはともかくとして、スピッツの小説について考えている時間が楽しいのだ。
 テーマにする曲を選ぶために、まずはどのアルバムから選ぶかを決めようと、一日一枚か二枚ずつ聴く。アルバムごとに違う色があり、どのアルバムも捨てがたい。聴きながら、浮かぶ言葉を集めていく。ひとりよがりのひねくれもの、恋の喜びと切なさ、弱気なやさしさ、秘密の抵抗、逃げ隠れ、可愛い間違い、愛しい愚か者、地味で大規模な憧れ、等々。そんな感触だけの言葉ならとめどなく浮かんでくるけれど、これらをそのまま主人公の性格にすればいいってものでもないのし、浮かんだ言葉をそのまま並べ立てるのではなく、世界観や話の展開から匂わせるような物語を作りたい。むずかしそうな作業!
 スピッツの曲に聴き入るとき、私がまず最初に見つけるのは、人物でもストーリーでもなく、架空の場所だ。一曲一曲に、絵画のようなフィルムのような、場所のイメージができあがり、一度出来あがると、その曲を聴くたびに、頭の中でフィルムが再生されるように、何度でも自然とその場所が浮かんでくる。例えば、「ババロア」は夜中の白い病棟と真昼の土けむり、「夜を駆ける」は高架沿いのフェンスごしに見える新しいコンクリ坂道、「ガーベラ」は草花の生い茂る古びた無人駅、「ハートが帰らない」は、カフェテラスの安っぽい丸テーブル。遠い記憶の場所より曖昧で、朝方の夢よりは鮮明な、頼りないけど揺ぎないイメージの場所。自分のつくる物語でそのフィルムをうまく再生することができれば、爽快だろうなぁ。

 昨日、ためしに「ミーコとギター」で書いてみた原稿用紙三枚分ぐらいの文を夫に見せたら、彼はワードの画面を反転させ、始終薄ら笑いを浮かべながら読んだ。画面を反転させるのは、ネットをしていてニヤニヤしたい気分になったときにみせる彼の癖である。ながいミステリー小説など書く彼に、世界を順序良く組み立てられない私の苦労などわかりっこないのだ。
 いつまでも反転させながらニヤニヤしているばかりでなにも言ってくれないので感想を求めたところ、一言だけ、「君って、放課後が好きなのね」と、言われた。言われてみれば私の書いた数少ない小説の、ほとんどが放課後はじまりだ。実際、子供のころから放課後を愛している。小学生のころは道草をすることに、中学生のころは合唱部の教室で歌いながら校庭のサッカー部を眺めることに、高校生のころは物語を作る道具に囲まれた演劇部室で好きな人と居ることに、魂の一番熱い部分を注ぎ、いつのときも私の心は、放課後が一番忙しかった。
 あぁ、ダメだ。こうしてまた、自分のことに頭がふらふらいってしまって、これでは小説にならない。小説、小説。どんな小説。今日のお昼休みに読んだ短編は、スピッツっぽくてよかった。現実的な人が、非現実的な事象に出会い、ちょっと驚きながらも割とすんなり受け入れて、非現実的な事象のなかで現実的な日常が繰り広げられていく短編集。あんな感じの物語にすれば、スピッツの音楽に近づくかもしれないなぁ。キャラクターとかストーリーよりも雰囲気重視で、もわもわどろんとした、気持悪いけどなんか可愛い、けどキモカワイイというのとはちょっと違う、そういう物語を書いてみたい。書ききってみたいなぁ。
by papiko-gokko | 2008-11-14 16:27 | Diary