日記と短歌
by papiko
都会の絵の具
 夏は、雲がおもしろい。眩しく白いもくもくで、はっきりとした形をつくる。夏の雲をみていると、わぁ怪獣みたい!キリンみたい!と、今でもすんなり思ってしまう。真昼の空は目に沁みるほど青くて、空の青と雲の白と、それからひまわりの鮮やかな黄色とのコントラストが、色を必死に選び抜いて描いた絵画のように、ぱっと美しかった。ひまわりの花は、なぜあれほどまで夏に似合う色でピッタリ夏に咲けるのだろう。夏のことが大好きで、どうしても夏の真ん中で咲きたくて、それであんな色になったのではないかと思うほど、奇跡みたいに似合っている。
 こうも毎日暑いと、夏の苦手な私の身体も、いい加減夏に慣れてくる。そして季節を楽しむ余裕がでてきたりなどして、夏もなかなかイイんじゃない?と思い始めたころ、そのタイミングを見計らったように秋風が吹き始めるのだ。だから私は毎年ついつい、散々苦しめられたはずの夏の終わりを惜しんでしまうことになる。夏という季節は、登場と退場の演出が、実にうまい。春のぽかぽかのまま夏に突入するのではなく、一度しとしとじめじめの梅雨を挟むことによって、自然と夏の到来を心待ちにさせ、そうして十分にじらせた後にしたり顔で堂々と到来し、思う存分夏な自分を主張し暴れて暴れて暴れ疲れたら、ギラギラ睨みをきかせ続けていた瞳をふっと緩めるように、夕日の色や乾いた風に気を許し、秋の到来をそっとそっと受け入れ始めるのだ。そうしてそっとそっと緩んでいくことで、私たちは「あぁ、夏が終わってしまう・・・」「なんだかんだで、楽しかったよね、夏・・」と、しみじみ思う機会を与えられる。私なんか、毎年まんまと夏の策略にのせられて、苦手にもかかわらず梅雨空を見上げて夏の到来を待ち、案の定散々痛めつけられそれにもかかわらず、秋風の冷たさに去りゆく夏を惜しんでしまう。悔しい。
 とりあえず、もうしばらくはこの暑さが続くのだろう。原色の絵の具を塗りたくったような影ひとつない真昼間が、続くのだろう。パステルの春とセピアの秋が好きなのに。それなのに、一番過ぎていくのを哀しく感じるのは、原色の夏。

***

 先ほどから、賃貸情報を眺めつつ、「木綿のハンカチーフ」の椎名林檎バージョンと太田裕美バージョン交互に聴いている。聴けば聴くほど、なんて泣ける歌。「毎日愉快に過ごす街角 僕は僕は帰れない」。東の都は、なんだか帰れない気分の人たちの居場所なのだろうな。
 引っ越す街を決めるために東京の街の情報をいろいろ集めているのだけれど、知れば知るほど、東京という場所の奥深さにうっとりしてしまう。好きだ。私は都会が好きなのではなくて、東京という場所が好きなんだなぁと気付いた。憧れの集まっている場所であるということがまず一番の理由なのだけれど、それに私は、東京の距離感が好きなのだ。人との距離感、駅との距離感、街との距離感、今日と明日の距離感。東京の距離感は、なんだか私にとって心地よい。
 地方都市もそれぞれに魅力的だと思うけれど、どうも訪れるたび、都市全体の個性が統一されすぎている気がしてしまう。それは、その土地の特色を大切にしているからこそ生まれる統一感で、決して悪いことではなく、温かくててよいことだと思うのだが、しかしそれが私にとっては、どうしても息苦しい。東京の場合は、あまりにもあらゆる場所からあらゆる個性が集まり寄せ集められているので、統一感がない。絶対的な個性の不在?個性的すぎて逆に無個性?なんだかうまくいえないかれど、他の土地(地元含む)では人の集まる場所へ行くとしんどくなるのに、東京では、人のなかにいても息苦しくない。統一感がないということは、どんなものも受け入れるということなのだろう。笑顔で「ようこそ」と受け入れられるというよりは、無表情で「ドウゾご勝手に」って切符に判を押されるような受け入れられ方だけど、それが癖になる人には癖になるのだ。
 僕は僕は帰れない。地元に恋人がいなくてよかった。家族なら、いくらでも呼べるし帰れるし。うん、お金さえと有給あれば、いくらでも何度でもいつでも帰れるのだから、私は東京へいたっていいのだ。いいのだいいのだ。賃貸情報が楽しい。私の東京生活第4弾の幕開けなのだ。

***

 そういえば今日は、いちごポッキーを持っていくべきじゃなかった。残念ながら、別にちっとも楽しくなかった。当然といえば当然か。会社だもの。パソコンと大量の資料しかない場所だもの。営業部は私ひとりでも、別の部署は普通に機能していて、営業部フロアにもなんだかんだで入ってきたりするし、営業さんも途中で来たりしたし、ほとんど自由になんてできなかった。途中からきた営業さんとは、結構長いことふたりだけだったのに会話がみごとに一言もなくて、『あー、ここにいるのが私じゃない事務員さんだったら楽しく会話したのだろうなぁ・・・申し訳ない・・今ここに存在している事実が申し訳ない・・・』と、うじうじしたりしていた。本当は、ひとりでのびのびへらへら、いちごポッキーを美味しく食べたかったのに。残してあったいちごポッキーも、さっき、IPodが見つからなくて、腹を立てて探しながらボリバリ全部食べてしまった。ああ、もったいない、せめて空でも見上げながら食べればよかった。いや、そんなことしたら、遠足にいきたくなって、涙がでたかもしれない。哀しくなりかねないときは、腹を立てるに限る。
by papiko-gokko | 2007-08-15 22:36 | Diary | Comments(0)
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