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日記と短歌


by papiko

幸福も孤独も同じ金色に染めて十一月並木道


 12月からいなくなる私のいた場所を活用するため、昨日営業部フロアのデスクの配置替えをして、私のものだったデスクも、パソコンも、別の子のものになりました。みんなであれこれいいながらわいわい動かして、席替え直後の小学生みたいな楽しい興奮のあと、みんなが新しい座席についてから、少し離れたところにある応接セットの椅子に腰掛けて新しい営業部を眺めたら、淋しさが押し寄せてきました。私のいない営業部は、こんな感じになるんだなぁと、幽霊のような心地で、眺めていました。仕事の引き継ぎも本格的に始まって、私がいなくなっても大丈夫な体制が、着々と整っていきます。仕事に取りかかるためみんなのいる場所に背を向けて音と声だけ聴いていると、自分の背後にはまだ、配置を変える前の前日までの見慣れた風景があるようで、今までのデスクに私が座ってパソコンを打っている気がして、今度は幽体離脱しているような感覚に陥りながら、自分を含む営業部の情景を、背を向けたまま眺めていました。
 毎日のようにあぁ辞めたいと思いながら働いていたくせに、退職が目前になったとたん、こんなに寂しい気持ちになるなんて、我ながら、単純だなぁ。淋しさと同時に、この場所へ通わなくなる日常が迫ってきていることへの不安がゆらゆらわいてきて、自分がこれまで、この営業部の一員であるということに、どれだけ自分の存在を支えられていたのかを知りました。でも、席替え中、お腹の子供がぐわんぐわん動いて、嬉しそうだったから、この機会に私が仕事を辞めるのは正しい選択なんだと、思うことにします。今、なにより、子育てをしてみたいもの。
 もう、私のデスクはなくなったから、営業さんが外出している間は営業さんのデスクを借り、営業さんがみんないてどのデスクも埋まっているときには、応接セットに腰掛けて、引き継ぎの日々を過ごします。

 今日は有給をもらって、二週間ぶりの妊婦検診にいってきました。今日は夫が仕事で、私ひとりの受診です。ひとりで外へ出かけると、安心できないことだらけで、気持ちが険しくなります。そんな険しい気持ちで歩く時間が好きだった時期もあったけれど、今は、なるべくひとりで外にでたくありません。好きだった時期には、険しさが逞しさや勇ましさへと変化してい、そんな、凛々しくあろうとする自分を愛せたけれど、今の私は、険しくなればなるほど心の中が、狭く貧しくなっていくばかりのようで、そんな保守的な自分は、きらいです。
 予約が11時半だったのに対し、実際に名前を呼ばれたのは3時前で、かなりの待ち時間を、うとうとと過ごしました。「ムーミン谷の11月」を持って行っていたので、しばらく読んでいました。11月に読むのに、これ以上ぴったりな物語はありません。診察室に呼ばれてからお会計までにかかった時間は、待ち時間に比べると、ほんの一瞬でした。お腹の子はいつのまにやら逆子ではなくなっていて、そのほかは、変化がよくわかりませんでした。長い待ち時間でぐったり疲れきっていて、せっかくのエコーもあまり楽しめず、それがお腹の子にも伝わったのか、今日は顔を奥の方へ隠してしまっていて、もらった写真にもほとんど写っていませんでした。ごめんね、また今度はお顔を見せてほしいよ。お腹の子には、事あるごとにごめんねって、そればかり言っている気がするなぁ。貧血改善の鉄剤をもらい、一安心です。
 帰り道、イチョウ並木に夕日が照って、並木道を歩く人たちの姿も含め、額縁に入れられた油絵のような風景が続いていました。ベビーカーを押す若い女性から、銀杏拾いに精を出すおじいさんまで、さまざまな年齢層の、さまざまな事情をもった人たちが、一様に平和な金色に染まっていました。私も周りと同じく平和に染まっているのかと思うと、なんだかほんの一瞬、「ちぇっ」と、舌打ちしたいような気持ちになりました。きっと、朝に食べたパンひとつしか入っていないお腹がぺこぺこに空いていて、一時しのぎの飴を舐めながら、ひとりで歩いていたせいです。気持ちがくさくさしていたのです。
 真っ直ぐのイチョウ並木をしばらく歩くうちに、都会の整備された並木道の秋ではなく、いろいろな強さの赤にそれぞれの速度で染まった、まだらな山の紅葉を見たくなってきました。歩きやすい石畳にはらはらと覆うイチョウのじゅうたんをしゅむしゅむ蹴って歩くのもドラマチックでいいけれど、車でぐねぐね道をのぼって山まで行って、木の葉や小枝をばりばり踏みしめながら、やわらく湿った土の上を歩きたいです。並木道を我がもの顔で飛び交うハトに苦笑しながら歩くのもクールでいいけれど、腰かけようとした切株の上に見たこともない虫を発見して、ぎゃあっと大げさに騒ぎ、面白がったり気味悪がったりしたいです。
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by papiko-gokko | 2010-11-11 21:11 | Diary | Comments(0)